最近は大きめ(4インチ前後)の液晶ディスプレイを搭載し、様々な情報をリアルタイム表示してくれる受信機/無線機が主流のようで、自分自身もIC-7300とIC-705の二台を使用している。
コンパクトサイズにもMalachite/Malahite/Malahit(以下、Malachite系と略)のようなDSP SDRレシーバーが有り、今は既に手放してしまったが、かつて「Malachite DSP SDR Receiver HQ」という製品を使用していたことがある。
⇒【今風の見えるラジオ…MALACHITE DSP SDR RECEIVER HQ】
手放して暫く経ち、ふと海外の通販サイト(Aliexpress)で見掛けたDSP SDR レシーバーの鮮やかなボディカラーに興味を持ち、前述のMalachite系とは異なるアーキテクチャであることと、何よりも格安な(完全金属製ボディで液晶ディスプレイも大きいのにMalachite系より安い)点に惹かれて購入してみた。
DeepelecのDeepSDR 101。
ディスプレイ | 4.3インチ(800×480)IPS液晶 輝度調整可 |
制御方法 | 抵抗膜式タッチ スクリーン + ロータリー エンコーダー |
周波数範囲 | 100k~149MHz |
復調モード | CW、AM、SSB(LSB/USB)、WFM、FMステレオ(ステレオヘッドホン使用時) |
周波数ステップ | 1Hz/10Hz/100Hz/1kHz/10kHz/100kHz/1MHz/10MHz |
スペクトラム表示帯域 | 192kHz、128kHz、 64kHz FFT リアルタイムスペクトル表示 |
アンテナ端子 | BNC-J、インピーダンス 50Ω、最大入力電力 -20dBm |
リファレンス発振器 | TCXO 26MHz ±0.5ppm |
サンプリングレート | 16bit |
イヤホン端子 | φ3.5mmステレオ |
内蔵スピーカー | 最大 3W、4Ω マルチメディア スピーカー |
充電端子 | USB Type-C、5.0V/2A |
消費電流 | 約 250mA @ 5V |
内蔵バッテリー容量 | 5000mAh/3.7V、18.5Wh |
使用可能時間 | 約10~12時間(出力音量とディスプレイの明るさによって変動) |
メモリ機能 | 99 チャンネルをプリセット、局名等のテキスト(2行)/周波数/復調モードを記憶 ※CSVフォーマットのため、Excel(互換アプリ含む)やテキストエディタで編集可 |
サイズ | 横136×縦74×奥行22mm(突起物含まず) |
重量 | 約310g |
構成品
本体と付属品が収納出来るPVC製のセミハードケースが付属している。
この手のケースは黒色が一般的だけど、付属品は濃紺色が実に色鮮やかで新鮮。
他の付属品は、一枚紙の説明書(英文/中文)、折り畳みスタンド、スタイラスペン、液晶保護フィルム、ロッドアンテナ(7段・最長70cm)、USBケーブル。
液晶保護フィルムはディスプレイにジャストサイズなので、本体を開けて作業すると綺麗に貼れる。
外観
鮮やかなメタリックブルー(水色っぽい)のボディ、ツマミ(ロータリーエンコーダー)が一つだけ、アンテナ端子がBNCといったところが、外観上でMalachite系と大きく異る部分。
また、表示は一見Malachite系と似ているが、復調モードなどの各種設定がスペクトラム表示の上に有り、また受信レベルメーターが無く数値(dBm)表示のみといった点が直ぐに判る違いだろうか。
前述の通り、ツマミ(ロータリーエンコーダー)は一つ。
下方に向かって、通電/充電インジケーターLED、USB-A端子(5V出力…大容量内蔵バッテリーを活かしてモバイルバッテリーとしても使える)、電源スイッチ、USB-C端子(充電/通信用)。
Malachite系の電源スイッチは押しボタンの長押しで反応が悪いとなかなか電源OFFに出来ない場合も有ったが、これは単純なスライドスイッチなのでON/OFFともに簡単。
アンテナ端子はBNC…SMAに比べて着脱が容易で頑丈なので、これは嬉しい。
下がφ3.5mmのミニプラグ端子で、ステレオイヤホン/ヘッドホンを使えばFM放送をステレオで聴くことが出来る。
ブロックダイアグラムがプリントされている。
Webサイトに記載されているものはアンテナ端子とLNAの間に受信帯域毎のフィルター群が記載されているが、こちらでは省略。
プリントだけの省略なのか、回路そのものも省略されたのかは不明。(前者であって欲しい)
操作系
チャンネル(メモリ)選択 | 1〜99 |
周波数設定 | 100k~149MHz、最小ステップ1Hz ※タップすることでテンキーで直接入力も可能 |
スピーカー音量(SPK) | 0~35dB、1dBステップ |
イヤホン音量(EAR) | 0~35dB、1dBステップ |
復調モード | CW、LSB、USB、AM、WFM、STE(FMステレオ)、I/Q |
AGC設定 | OFF、SLOW、MID、FAST |
基準レベル(REF) | -99~99dB, 1dB step |
バックライト輝度(LCD) | 1%~99% |
IFゲイン | -12~67dB, 1dB step |
スペクトラム表示スタイル設定 | 緑色塗り潰し、緑色線のみ、青色塗り潰し、白色塗り潰し |
スペクトラム帯域幅設定 | RF スペクトル (192kHz、128kHz、64kHz) およびオーディオスペクトル (64kHz) |
ウォーターフォールエリア設定 | ウォーターフォールまたは音声レベルグラフ(x1 / x8 / x64 振幅) |
搭載されているロータリーエンコーダーは一つ。
押すことで項目を選択し、回して設定を変更する。
尚、エンコーダー短押しで選択出来る項目は、上の表で「チャンネル(メモリ)選択」から「復調モード」までの5項目。
その他はエンコーダーを押しながら回して選ぶ必要があり、結構手間が掛かる。
尚、単に長押ししていると、その時点のチャンネルの現在の周波数と復調モードを上書き保存するため、うっかり書き換えてしまう恐れが有る。
せっかくのタッチパネルなのにタッチ操作で設定出来るのは周波数のみ。
他の機能もタッチで選択⇒ロータリーエンコーダーで設定が出来れば遥かに使い易くなるのに…何故こんな仕様にしたのか理解不能。
ロータリーエンコーダーの押し込み操作を多用するのでヘタリが心配。
周波数入力画面はNanoVNA等でもお馴染みのタイプ。
キャンセルは無いが、何も入力せずにバックスペース「⇐」をタップすれば設定を更新することなく戻る。
試用
操作系はかなり癖があり、各種機能をタッチパネルでダイレクトに選択・設定出来るMalachite系に比べて、使い勝手はお世辞にも良いとは言えないが、良く聴く局を予め登録しておいて選んで聴く・同じ局を良く聴くのであればさほど気にならないか。
肝心の受信性能は同じアンテナ・同じ時間帯で比べた感じではMalachiteよりやや良好で、音質的にも聴きやすいと感じた。
ただ、中波帯で強力な局(自宅ではJORF 1422kHz)の近くではスペクトラム表示上にゴーストが出易い。
バッテリーの持ちはMalachite系と比べて明らかに上。
以前使っていたMalachite DSP SDR Receiver HQではこのDeepSDR 101と同じく5000mAhのバッテリーに換装していたが、使用時の消費が大きいことに加えて未使用時の消費も結構大きく、気づいたら空…なんてことがあった。
時刻の精度もMalachite系と比べて優秀で、設定してから結構経つが数秒程度のズレに収まっている。
メモリ機能は便利
このラジオは局を探して聴くというよりも、予めメモリ登録した局を選んで聴くスタイルを想定しているようだ。
メモリ(チャンネル)は99有り、局名(メモテキスト…上の写真では右上の緑文字)/周波数/復調モードを保存出来る。
メモテキストは上下二行で、それぞれ最大で中国語6文字または英語12文字表示出来る。
(中国語が可能であれば日本語の漢字も或る程度は表示出来そうな気もするので、今度試してみよう。)
局名の他にも放送曜日や時間帯を入れるのも便利。
このメモリ情報はCSV形式のため、Excelや互換アプリ、テキストエディタで作成・編集出来る。
DeepSDR 101をパソコンにUSB接続しロータリーエンコーダーを押しながら電源をONにすると、外部ストレージとして認識されるためファイルを直接編集することも可能。
また、チャンネル切替でメモリを呼び出す他に、チューニングしていて登録されている周波数と合致するとメモリ内容が表示されるという、いわば双方向の動作になっている。
スピーカー音量が大きい
上の写真ではスピーカー音量は最小(消音ではない)・イヤホン音量はオフ(消音)にしているが、この状態でもスピーカーからの音がかなり大きい。
受信強度や、基準レベル/IFゲインの設定によってもかなり変動するが、基本的に大きすぎる。
また、AGCの挙動が今ひとつ怪しくアテにならず。(海外のユーザーレビューでもAGCが使い物にならないと酷評されている。)
イヤホンの音量調整は多少まともだけど、スピーカーの音量がどうにも大きすぎるので対策を思案中。
内蔵スピーカーとフロントパネルの間に5mmほどの隙間があるので、ウレタンスポンジを詰めて減音を試みたものの、吸音素材であっても5mm程度の薄さでは殆ど効果が無く、僅かに籠もった程度。
それならスピーカーと直列に抵抗を入れてみる?…可変抵抗なら音量調整も容易になるし…と考えてみたものの、果たして単純に抵抗を直列接続しても良いものか。
それに、現状では可変抵抗を実装するスペースが無い。(理想はイヤホン端子の横辺りにツマミを設けたい。)
スピーカーを横にずらせば小型ポテンショメータ(9mm角)なら実装出来そうだけども。
というわけで、ひとまず検討継続。
さて、今後はどうなる?
本製品の登場は2022年8月。
その後ファームウェアアップデートの予定が告知されたが、現時点(2023年2月)で未だ出ていない。
メーカーのサイトを見ても昨年秋以降の新たな動きが無く、本製品に関する情報も出ていないため、もはやこのまま終息してしまうのではないかと内心思っている。
ユーザーフォーラム的な場でも以前は操作性の改善要望や機能的な問題(AGCや音量)の報告が挙がっていたが、今では何ら動きが無いことに対する批判がチラホラ有る程度で閑散としている。
Malachite系とは異なるアーキテクチャだし、ファームウェアの更新で機能の改善や拡張など大いに期待できるだけに、このまま終わってしまうとしたら非常に惜しい。