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大幅に性能と機能がアップしたRaspberry Pi 5。
国内の技適を取得して流通も落ち着いてきて、そろそろかな…と考えていたところ、たまたま見かけたゲーミングPC風ケースに惹かれて、本体とNVMe SSDその他諸々をまとめて購入した。
ケース(SunFounder Pironman 5)
このメーカー(SunFounder)の製品はAmazonでも良く見かけるし、Raspberry pi 4用のPironman 4もAmazonで購入出来るが、このPironman 5はAmazonを含めて国内での取り扱いは未だ無い模様。
先ずAliExpressで探したところ、有るには有ったけれど結構高価。
もしかしてメーカーで直販していたりしないかな?…と調べたらオンラインショップが有り、AliExpress価格の半額、しかも会員登録すると更に10%オフ…迷うこと無く購入。
尚、中国のメーカーだが、日本語の詳細なオンライン・ドキュメント(画像や動画も豊富)が用意されている。
6/9にオンライン注文。
発送連絡の前にオンラインショップの在庫表示が次ロット待ちになったためちょっと焦ったけれど(注文時には在庫有り)、直後に発送連絡が有り、到着予定日の6/20に届いた。
各部
サイズは111.9×78.5×117mm、アルミ合金とアクリルパネルで構成される。
フロントパネル
左側上から、OLED/microSDカードスロット(スプリング・タイプ)/インジケーター(Raspberry Pi 5の基板上に有るLEDから導光バーで点灯)/電源スイッチ。
電源スイッチはモーメンタリー・タイプで、Raspberry Pi OSを使用している場合:
・1回押すとシャットダウンオプション画面が開く。
・素早く2回押すとシャットダウンする。
・長押しすると強制シャットダウンする。
⇒シャットダウン後は1回押すと起動する。
いずれの場合もシャットダウンするとRaspberry Pi 5上のLEDが赤色点灯になるため分かり易い。
タワークーラーとケースファン
ファン(PWM…40mm角)付きのタワークーラーと二個のケースファン(RGB…40mm角)で冷却効果が期待出来る。
ちなみに他のタワークーラーやファン付きヒートシンクはSoCのみに接する物が大半だが、本ケース付属の物は公式ヒートシンク/ファンと同じくCPUに加えて無線用(WiFi/Bluetooth)チップと電源制御チップにも接するようになっている。
熱伝導シートを追加すればメモリやRP1チップもカバー出来るが、この二つのチップは公式ファンでも対象外のため必要は無さそう。(サーマルカメラで撮影した画像でも、この二つのチップは発熱量が少なかった。)
NVMe SSD
NVMe SSD(サイズ:2230/2242/2260/2280)に対応したスロット(Pi5 NVMe PIP)が有り、容易に装着出来る。
SSDはメーカーが公開している対応製品一覧にも有る「KIOXIA EXCERIA G2 NVMe SSD」の500GB品を選択。
もちろん全く問題無く起動し安定動作している。(それほどの高速化は必要としていないためデフォルトのPCIe 2.0。)
スペース的に余裕があるのでヒートシンクも装着してみた。
ヒートシンクが必要になるような使い方は想定していないけれど、鮮やかな赤色が気に入ったから。
アルミ製のヒートシンクを熱伝導シートを挟んでSSDに装着し輪ゴムで固定する仕組み。
絶縁体の輪ゴムなのでSSDの裏側やPIPの表側での接触・短絡の恐れが無い。
尚、Pi5 NVMe PIPは標準のMキーインタフェースであり、このインタフェースと互換性の有るデバイスで有れば他にも使用出来るはず…というのがメーカーの見解。
例えば、Hailo-8L AI アクセラレータなどが使えると活用の幅が大いに広がりそう。
但し、SSDと排他になるため非常に悩ましい。
SSDスロットの下にはRTC(Raspberry Pi 5で標準装備になった)用のバックアップバッテリーホルダー(CR1220/ML1220)が有るが、交換が大変そう。
充電タイプの「ML1220」を使用すれば本機で充電(トリクル充電)も可能なので、いずれ機会が有れば交換しよう。
OLED
前面にOLED(0.96インチ、解像度:128×64)が有り、専用アプリを使うことで各種情報(CPU使用率/温度、IPアドレス、メモリ使用量、ストレージ使用量)がリアルタイム表示される。
起動完了すると表示開始するため、ヘッドレス運用で起動・再起動した際に使用可かどうか分かり易い。
赤外線受光器
オーディオ系など赤外線リモコンに対応したアプリケーションで活用出来そう。
リアパネル(各種インタフェース)
左から、給電用端子(USB-C)、ディスプレイ端子(HDMI×2)、Ethernet端子(RJ45)、USB端子(3×2、2×2)。
ディスプレイ端子はHDMIなのでディスプレイとの接続時に一般的なケーブルを使える。
RGBファンの他にケース内の天井部分にもRGB LEDが四個有り、様々な色とパターンで点灯出来る。
正直、PCのケース内やファンを光らせることに何の意味が有るんだ?と思っていたけれど、いざ目にすると妙なワクワク感が有るね。
組み立て手順は多いものの難しい部分は無く、ズレや歪みなどで力技を使わなければネジ止め出来ないような箇所も無く、スンナリ完成。
むしろ、後に記すカスタマイズ関連の方に時間が掛かったかもしれない。
カスタマイズ(というほどでも無いけれど)
事前にケースの写真を眺めたり、メーカーのユーザーフォーラムを覗いていて、ケースに幾つか手を加えたい箇所が有り、そのための準備(部材調達、加工)を先に進めておく。
外装用ネジ交換
外から見える部分に使われている低頭タイプ・プラスネジ(M2.5×4)を低頭タイプ・六角穴ネジに交換する。
また、ケースファンの取り付けは低頭タイプ・ビス(M3.5×8)を使用するが、フォーラムではネジが短くて固定出来ないという報告が複数有るため、最初から低頭タイプ・六角穴ネジ(M3×16)とスペーサー、ナットの組み合わせに変更した。
ケース内の空気の流れを整える
仕様ではケースファンは二基とも排気用として使うようになっているが(GPIO用開口部から吸気)、ユーザーフォーラムで「GPIO用開口部からの吸気では不十分なので、ケースファンの一方(下側)を裏返して取り付けて吸気した方が冷却効果が高い」という投稿を見かけ、それに対してメーカーからも肯定的なコメントを返していたので早速取り入れることにした。
更に、メーカーからのコメントでは「GPIOを使用しないのであれば、空気の流れが乱れないように開口部を塞いでおく」ようにとも勧められていたので、その対処も併せて実施する。
セパレーター作成
ケースファンをそれぞれ吸気と排気で使う際、それぞれのファンが同一面に有り接近しているため、間にセパレーター(板)を置いて空気の流れを整えると効果が大きい。
二基のファンでセパレーターを挟み込めば取り付けが容易で見た目もシンプルになるが、真っ平らな形状ではタワークーラーに干渉するため、二段階で曲がったスロープ形状にする。
せっかく中が見えるケースなのでセパレーターも透明アクリル板で作ることにした。
当初はアクリル板を三片に切り分けて金具にネジ止めして繋ぐ方法を考えていたが、アクリル材の切断と穴開けは結構手間が掛かる。
特に穴開けは専用のドリルビットを使わないと割れたり欠ける恐れが大きい。
調べてみるとアクリルヒーターなる物を使えば割と容易、且つ、綺麗に曲げられることが分かり、アクリルヒーター自体もキットなら割と安く入手出来るようなので、早速購入。
アクリル板はちょうど良いサイズ(80×40×2.5mm)の物が単品販売されていたので、カットする手間が省けた。
ヒーターに通電して数分待ち、アルミパイプ部分が十分熱くなったらアクリル板の曲げたい部分(外側)をアルミパイプに暫く押し当てて、柔らかくなったらパイプに接している面に対して逆方向に曲げる。
曲がり具合を変えたい場合は再度熱してやれば良い。
GPIOカバー作成
手持ちの部材を使ってカバーを作成。(カバーというよりも詰め物かも。)
簡単にテープを貼るだけでも十分だけど、ちょうど手持ちにGPIOカバーが有ったので作ってみた。
ケースファンにスペーサーを装着
下側のケースファンを吸気用にするため裏返して取り付けるが、そのままでは回転部分がケースに接触してしまうため、ネジ穴の段差を利用してスペーサー(アルミ製、内径:Φ3.1mm/外径:Φ5mm/長さ:4mm)を装着。
段差の深さが3mmなのに対してスペーサーの長さは4mmなので1mmほどファンを浮かせられる。
また、仕様通りに取り付ける上側のケースファンにもナットの締め付け用に同じスペーサーを装着する。(開口部がナットサイズのギリギリなので締め込むと埋まってしまい、締める/緩める際に空回りする恐れが有るため。)
右下のケースファンから吸気し、SSDに沿って流れ、セパレーターが途切れた左端から上に上がり、タワークーラーを通って、右上のケースファンから排気する。
温められた空気は上に流れるし、タワークーラーのファンもこの写真で左から右へ空気が流れる方向なので、良い感じに吸気⇒排気してくれると思う。
タワークーラー用ファン交換
更なる涼し気な感じと華やかさを求めて、タワークーラー用のファンもケースファンと同じくシースルーボディのRGB-LED付きに交換してみた。
メーカーのユーザーフォーラムでもこのファンをRGB-LED付きに交換したい…という投稿があり、メーカーからの回答は該当するファンが無いため一般的なファンを用いているが、「RGB-LED内蔵PWMファン、40mm角サイズ、4pin端子(可能ならRaspberry Pi 5に合致するコネクタ)」を入手出来れば交換は可能とのこと。
交換に際してはほぼ全バラシに近いため結構手間が掛かったが、無事完了。
カメラケーブルの引き出し(今後活用予定)
このケースにはカメラケーブル用の開口部が無いが、Ethernet(RJ45)コネクタ上部(写真では左側)の隙間から引き出せる。
基板上のカメラ用コネクタからEthernetコネクタの上面に沿って引き出す際に接触の恐れが有るPoEピンには、念のため保護カバーを装着している。
ただ…実際にカメラを使うとしたらUSB接続タイプの方がスマートかな。
トラブルシューティング
ネットワークアクセスがインターネット限定で一方通行
ヘッドレス運用のためVNCを使うのだが、他PCからのVNC接続が出来ずPINGも到達しないという状況で2~3時間大ハマリ。
Raspberry Pi 5からもインターネットアクセスは全く問題無いが、他PCへのアクセスは一切不可。
かなり調べて、WiFiルーターのプライバシーセパレーター(STAセパレーター/APアイソレーション)という機能に因るものだと判明。
これは同じWiFiルーターの異なるSSIDに接続した端末間での通信を遮断するというもの。
確かにRaspberry Pi 5だけ他の機器と異なるSSIDに接続していたため、同じSSIDに接続し直したところ、他PCとの通信が出来るようになりVNC接続もOK。
尚、Raspberry Pi 5のOSで新規採用された「wayland」ではVNC接続時にいろいろ支障(癖)が有るとのことなので、以前と同じ「X11」に戻している。
ヘッドレス運用(VNC)時に一部のアプリが非常に重い
VNCで操作しているとChromium(Webブラウザ)やVisual Studio Codeなど一部のアプリが非常に重い。
Raspberry Pi 5にディスプレイを接続した状態ではVNC側の著しい速度低下は無い。
実はこの症状は以前遭遇したことが有り、コンフィグファイル(/boot/config.txt)の設定を一部変更することで回避した。
今回は手っ取り早く「HDMIダミープラグ」を使用することにした。
HDMIコネクタに挿すことでディスプレイが接続されているように認識され、ヘッドレス運用時に生じる不安定動作(表示されない、解像度が選べない/固定されない、表示が遅くなる、等)の改善解消に効果が有る。
接続⇒再起動後は実際にディスプレイを接続した際と同様(VNC経由なので若干の遅れはやむを得ず)の表示速度に戻った。
他にも、VNC環境では【外観の設定】(メニュー ⇒ 設定 ⇒ 外観の設定)を開こうとすると「お待ち下さい」的なダイアログが一瞬表示されるだけで開けなかったが、こちらもHDMIダミープラグの装着で開けるようになった。
そういえば、Chromiumは日本語入力が非常に重いという評価を結構見掛けるけれど、VNC経由でも特に重いとは感じない。(日本語入力はMozcを使用。)
Webサービス(情報表示、各種設定)
OLED表示の他にも、PC等からWebブラウザで本機(https://<IPアドレス>:34001)にアクセスすることで、より詳細な情報を確認したり、ファンの動作やRGB LEDの点灯など設定出来る。