
AliExpressで以前からよく見かける、ESP32とSi4732で構成されたミニラジオ。
サイズ:約80×33×20mm(突出部含まず)、重さ:90g前後(CNCアルミ製シェルモデル)/55g前後(3DP樹脂製シェルモデル)という小型軽量ながら、なかなか高機能。
・1.9インチIPS HDスクリーン(解像度320×170ドット)
・受信周波数範囲:150kHz~30MHz/64MHz~108MHz
・受信モード:AM/FM/LSB/USB ※64MHz~108MHzはFMのみ。
・USB-C充電 ※急速充電未対応
・ミニスピーカー内蔵
・Φ3.5mmステレオジャック装備
・バッテリー内蔵(3.7V / 800mAh) ※販売されている商品によって異なる容量の物も有り。
・ヘッドホンアンプ内蔵 ※V2以降
・アンテナ入力のHi-Z対応 ※V3以降
・WiFi接続によるNTPでの時刻同期とEiBiスケジュールデータ対応(受信局名表示)
・FM放送のRDSによる時刻同期や局名表示 ※対応している国
オープンソースハードウェアということでファームウェアが有志達の手で開発・更新され、次々と新たな機能が盛り込まれている。
現在、ファームウェアはPU2CLR氏の系統(以下「FW①」と記す)とG8PTN氏の系統(以下「FW②」と記す)の二種類が主流で、AliExpressで販売されているATS-miniはほぼこのいずれかのFWが使用されている。
最近のアップグレード版と称するモデル(V2/V3)ではFW②が搭載されており、自分が購入した二台もFW②だったが、UI(見た目)と機能でFW①を選択し入れ換えた。
もしかすると所有個体固有の現象かもしれないが(でも二台共に確認…)、元々入っていたFW②では周波数の増減時にエンコーダーがスリップしているかのような挙動が見られたこともFW①へ入れ換えた大きな理由。
FW①ではノブを割と速く回しても問題無く追従する。
また、電源をOnにしてから受信出来るようになるまでの時間がFW②に比べてFW①は半分以下に感じられた。(他ユーザーのレビューによるとFW②は5秒くらい掛かっているらしい。)
中の基板もヘッドホンアンプの追加やアンテナ端子のHi-Z(ハイインピーダンス)化など改良が進み、AliExpressでは様々なバージョンの商品を見かける。
自分では以下のように区別している。 ※公式或いは一般的な分類で無い。
・V1…最も初期のモデル。
・V2…ヘッドホンアンプを追加。
・V3…V2に加えてアンテナ端子をHi-Z化。
尚、オープンソースということもあってか、上記の各モデルでも細かい違いが有るようで、ネットで見掛けた内部(基板)写真では以下の違いが有る模様。
・基盤の色や実装されているパーツの種類(特にESP32)、配置が異なる。
・基板上のプッシュSW(BOOT、RESET)の両方もしくは一方が未実装。
・バッテリーと内蔵スピーカーの両方もしくは一方がコネクタを使わず配線を直接ハンダ付けしている。
・バッテリーと内蔵スピーカーの両方もしくは一方のコネクタ仕様が異なる。
※大半は、バッテリーコネクタ:JST PH 2.0mm 2P/スピーカーコネクタ:JST SH 1.0mm 2P。
・内蔵スピーカーの種類が違う。
・バッテリー容量が違う。
※概ね800mAだが、同じ603040サイズで750mAhの物も有った。
特にV1でこれらの差異が見られる。
更には外装も多種多様。
・シェルが3Dプリントされた樹脂製(様々な色)かCNCアルミ製(ブラック/シルバー)。
・エンコーダーノブが樹脂製(既製品、3DP製)/樹脂軸に金属カバー/全て金属製で色も様々。
※エンコーダーのシャフトはローレットタイプ(周囲がギザギザ)だが、大半は横からイモネジで固定するタイプ(ギザギザ無し)のノブが装着されている。
・使用されているネジが六角穴かプラスで色もブラックかシルバー、樹脂製シェルではビスが使われているケースも。
ややこしいのが、旧型(V1)と同じシェルに新型(V2/V3)の基板が入っているケースや、新型(V2/V3)のシェルだけど基板はV2かV3か不明というケースも有ること。
商品説明に「ヘッドホンアンプ回路」(V2/V3)や「Hi-Z回路」(V3)の記載が有るものを選べば大丈夫だと思う。
※2025年5月以降に製造されたものは、この両回路が盛り込まれている(V3)…らしい。
さて、そんなATS-mini…CNCアルミ製シェルモデルが気になっていたものの、樹脂製シェルモデル(V2)に比べて二倍以上(中には三倍を超えるショップも…)と高価なこともあってなかなか購入に踏み切れず。
それが、新型(V3)が出たのがキッカケか急に値下がりし、樹脂製シェルモデル(V2)の5割増程度に下がっている出品(AliExpress)を見つけて購入した。
商品説明にヘッドホンアンプ回路についての記載は無く(当時はHi-Z回路搭載版は未だ出ていなかった)、格安なこともありV1を想定していたが、幸いなことにV2だった。
その後、アンテナ端子がHi-Z化されたモデル(V3)が新たに出たことを知り、受信比較をしてみたくなった。
AliExpressで品定めしていると、同じCNCアルミ製シェルながら手持ちの物とは微妙にデザインが異なるモデルを見つけ、更にはAliExpressの「初回割引」で樹脂製シェルモデル(V3)の1割増程度にまで値下がりしていたので即購入。(この初回割引は日数制限も有り、短いと僅か一日ということも。)
そんなこんなで、ブログで紹介する前にATS-miniが二台になった。
以降、先に購入した方を「V2」・追加で購入した方を「V3」と記す。
商品説明に「ヘッドホンアンプ回路」や「Hi-Z回路」について明記されていない場合、たとえ外装が新しいデザインの物で有っても内部の基板は古いバージョンである可能性が高いので、購入の際は要注意。 また、外装(特にノブ)が商品写真と異なるケースも多々あるため(購入者レビューでの指摘を何件か見掛けた)、商品写真や説明通りの物が届くかどうかは賭けかもしれない。 「商品説明通りの物が届きました」…で☆5評価が付くくらいだし(^^ゞ
パッケージ(V2)

商品によってロッドアンテナかドーナツアンテナの一方もしくは両方が付属したセットが有り、価格差はさほど無かったので両方付属したセットを選択した。
ちなみに、V3も全く同じパッケージと付属品だったので紹介は割愛。
ドーナツアンテナは直径約Φ10cm、対応周波数は9.9kHz~181MHzと超広帯域を謳っているが…さて。
ロッドアンテナは伸長時:約48cm/短縮時:約13cm、6段で根元で折り曲げられる。
V3(アンテナ入力:Hi-Z)でMW/SW/FM各放送を受信して比較した結果は、全てロッドアンテナ>ドーナツアンテナだった。
V2とV3の比較
外観(シェル)

いずれもCNCアルミ製でブラックアルマイト処理。
ちょっと分かり難いかもだけど、V3はV2に比べてエッジの面取りが大きい。
ノブは同じ物(総アルミ製)。

アンテナ端子(SMA-Jコネクタ)の開口部がV3はコネクタ外周に合った円形、V2は四角形でコネクタが奥まっているため基部とは接していない。
また、V3は写真ではアンテナ端子の下側(実機を正面から見て左上隅)にストラップホールが設けられている。

USB-C端子の開口部もV3はコネクタに沿った長円形、V2は長方形。

Φ3.5mmオーディオジャックの開口部もV3は円形、V2は四角形。
形状的にはV3の方が作り込まれている印象だけど表面仕上げの滑らかさはV2の方が上かな。

電源スイッチの開口部はどちらも特に違いは無いものの、V2の方が僅かに大きい感じがする。
尚、V2では前後シェルの間に隙間が有るように見えるが実際は完全に密着しており、この溝は元々の形状らしく全周同じ間隔で空いている。

底面には充電状態を示すLEDの点灯確認用(充電中:赤色点灯/充電完了:消灯)の開口部が有り、V2とV3で位置やサイズの違いは無し。

スピーカーの開口部はV2が樹脂製シェルモデルと同じなのに対して、V3ではかなり縦長になっている。
この違いは使用されているスピーカーに合わせているからなのかもしれない。(後述)
内部


まず一見して分かるのが基板の色で、V3は黒色、V2は緑色。
基板に使用されているパーツ(ESP32の種類など)と配置は極一部を除いて同じで、V3ではアンテナ入力端子がHi-Z化されている程度の違い。
使用されているESP32はどちらも「ESP32-S3-WROOM-1」で技適マーク有り。
WiFi接続によるPCやスマホからの各種設定と設定の保存・復元、インターネット接続してNTPとの時刻同期やEiBiスケジュールデータ(放送局の周波数/放送曜日/時間帯…受信時に合致した局の名称を表示する)ダウンロードなどの機能を安心して使用出来る。
他に大きな違いはスピーカーで、V3では今まで見た内部写真では見掛けたことが無い大判のスピーカーが用いられており、そのためシェルの開口部も縦長になったのではないだろうか。
尚、V2は元々15×10mm程度の小さめのスピーカーが実装されており、こちらもシェルの開口部はこのスピーカーに合わせたのではないかと思われる。
写真では見えないが基板の下にはディスプレイが有り、V2では接着剤で固定されているのに対して、V3は3DP製のホルダーで固定されており容易に交換出来る。
このホルダーも基板に貼り付けられているケースとスポンジ系のスペーサーを介して基板で押さえて固定しているケースを見掛けた。(手持ちのV3は後者。)
内蔵スピーカー交換(V2)


V2を購入した際に音が小さく感じられたので内蔵スピーカーを大きな物に交換した。
元々実装されていた物は15×10mm程度、ATS-miniのCNCアルミ製シェルの内寸は実測で幅が31mmほどで基板上の実装パーツに接触しない厚さは5mm程度。
収まるサイズから選択したのが30×12×5mmの小型スピーカー「TR-3012BOX」…タブレットなどへの内蔵用らしい。
尚、元のコネクタは仕様が異なるためATS-miniに合う「JST SH 1mm 2P」へ交換している。
手持ちの圧着ペンチではこのサイズに対応していなかったので新調した。
芯線と被覆部分を同時に圧着出来るので失敗し難い。
さて、交換してみて音量の違いはというと、同じボリューム値で明らかに交換後の方が大きく感じられる(ボリューム値で5くらいの音量差が有る)ものの、手間やコスト(今回は圧着ペンチやコネクタセットを新調したし)と見合うかというと微妙なところ。
また、V3はスピーカーを交換したV2よりもボリューム値で2~3程度音が大きいような感じ。
改造トラブル…ネジ舐め(V2)

実装されている基板のチェックと内蔵スピーカーの交換には先ずシェルを開ける必要がある。
使用されているネジはM2というかなり細い物(抜き取った後で確認)、六角穴付きタイプでその六角サイズは対辺1.27mmとかなり小さい。
うっかりすると直ぐに舐めるな…と思っていたら、一本は手を出す前に完全に舐めていて六角穴ではなく丸穴状態だし、他も一本はほぼ舐めかけで軽く捻っただけで完全に舐めてしまい、もう一本も抜ける前に舐めきってしまった。
最後の一本は辛うじて抜けたものの、再度締めたらその時点で舐めること確定という有り様。
代替ネジは同じ仕様(M2×15mm、六角穴付き極低頭)を購入するとして、問題は舐めてしまったネジの抜き取り。
極低頭で頭がシェルに完全に埋まっているためネジザウルスは使えないし、溝を切ってマイナスドライバで回すのも不可、精密機器なので叩くタイプの抜き取りツールも駄目。
となるとドリルで頭を飛ばすしか…ということをTwitterで呟いたところ、ネジザウルスでお馴染みのENGINEERの公式アカウントからコメントを頂き、「ネジモグラ」というツールを紹介していただいた。
このネジモグラは、先端が逆ネジのビス状になっていて、ネジ頭の舐めた六角穴(必要に応じてドリルで浅く穴を掘る)に反時計周りで捩じ込むことでネジ頭に食い込み、且つ、ネジを抜く方向に回すことが出来る。
早速、対辺1.27mmに対応した「ネジモグラミドル」と専用ハンドル「MINIドライヴ」のセットを購入し、抜き取りにトライしたところ…いとも簡単に全てアッサリ抜き取ることが出来た。
また、交換したネジを締める際に、手持ちの六角レンチ(安価なL字タイプ)では心許無いので、精密ドライバータイプを新調した。
尚、ネジ自体に問題が有ったのか(緩み止めは使われていなかった)、交換したネジはスムーズに締め込むことが出来た。
ちなみにV3はプラスネジが使用されていたがスンナリと抜き取ることが出来、V2と同じネジに交換しておいた。



スタンド作成


ATS-miniは小型でフットプリントも小さい。
CNCアルミ製シェルモデルは多少重いとはいえ、ロッドアンテナを伸ばした状態では少々不安定に感じる。(実際はロッドアンテナを大きく傾けない限り大丈夫だと思うけれども…。)
また、スピーカーの開口部が後ろに有るため音が若干小さくなってしまう。
同様に感じているユーザーが少なくないのか、安定性の向上とスピーカーからの音を前方に導く構造のスタンド(の3DPデータ)が幾つか公開されている。
その中からデザインが気に入ったモデルを作成してみた。
スタンドを使うことによりフットプリントが大きく拡がり、長めのロッドアンテナを装着し伸ばした状態でも安定している。
前面がやや上を向くので机上に置いた状態で操作しやすく視認性も良い。
音量についてはボリューム値で5程度増し、相応の効果が感じられる。
関連情報(ポータルサイト)
ATS-miniの各種情報(ハード、ソフト、ドキュメント)やファームウェア(FW①)、カスタマイズ(ハード改造、交換、3Dプリントデータへのリンク)などについては下記のサイト(github内)が非常に参考になる。
ちなみに、FW②関連はこちら。
使用感
実のところ受信性能は余り期待していなかった。
とりあえず中波やFMのローカル局が聴ければ良いかな、何よりもこのサイズでCNCアルミ製シェルというガジェット感に惹かれた…というのが本音。
実際に使ってみて、付属のアンテナ(ロッド、ドーナツ)やアマ無線ハンディ機用ミニアンテナで良好に受信出来るのは昼間はローカル局くらいだけど、夜間なら割と遠地の中波局や近隣の短波局が思っていたより良く入るし、コンパクトで手軽というのも大きなメリット。
アンテナ端子のHi-Z(V3)と50Ω(V2)の比較では、ロッドアンテナを使用した際にはV3・アマ無線ハンディ機用ミニアンテナ(DIAMOND SRHF10)を使用した際にはV2が受信状況が良かった…当然の結果か。
それぞれの組み合わせで同じ中波・FMのローカル局と国内短波局(R.Nikkei1&2)を受信して比較するとV3&ロッドアンテナの方が明らかに良好だった。
ただ、コンパクトさではV2&ミニアンテナなので、普段使いではV2の方が出番が多くなりそう。

機能面ではファームウェアのアップデートによる追加やブラッシュアップが進み、最近のファームウェア(FW①)ではWiFi接続※によるNTPでの時刻合わせや、ネットからダウンロードしたEiBiスケジュールデータ(周波数・曜日・時間)による局名表示にも対応している。
時刻合わせは、WiFiの設定を「Sync Only」にすると電源をOnにした際に接続し、同期完了するとWiFiをOffにするのでバッテリー消費を抑えられるし、WiFi接続・NTP時刻同期とも素早いため電源をOnにする度に実行しても特に気にならず。
尚、この時刻合わせをしないと時刻が表示されず、EiBiスケジュールデータでの局名表示も行われない。
※EiBiスケジュールデータは更新時のみダウンロードすれば良い。
V3とV2のどちらもCNCアルミ製シェルで開口部は殆ど無く、その全てが金属成分多めのパーツで埋められているのにWi-Fi接続は全く問題無いのが不思議。
※使用されているESP32は技適取得しているので国内でのWiFi接続は問題無し。
但し、一部(主にV1)に技適マークが無いESP32が使用されている個体も有るようなので念の為確認するのが良さそう。