
uConsoleは5インチと小さいながら1280×720の解像度を持つディスプレイとフルキーボード&トラックボールを装備していてなかなか使い勝手が良い。
そして中身はRaspberry Pi…FT8運用環境を構築してみるのも面白いかもしれない。
Raspberry PiベースでのFT8運用環境はこれまでにも幾つか構築して実際に運用もしてきた。
但し、いずれも無線機との接続はUSB…uConsoleはモバイルデバイスなのでワイヤレス接続したい。
既にWindowsPC(メインPC)ではIC-705とWiFi接続してFT8運用しているが、Raspberry Piでも「WFview」アプリを用いたIC-705とのWiFI接続について詳しい情報を得ることが出来たので、その実現が今回の目標。
ひとまず無事達成したので覚え書き。
ちなみにメインPCではIcom純正アプリ「Icom Remote Utility」(コントロールソフトウェア RS-BA1 Version 2に付属)を使用してIC-705とWiFi接続している。
IC-705
WLAN関連設定






「ユーザーID」と「パスワード」を設定し、管理者権限を有効(YES)にする
IC-705に用意されている「FT8プリセット」をベースに必要箇所を変更する。
uConsole
ループバック・オーディオ
IC-705とuConsole間のオーディオ信号は下記のように流れる。
・受信時:IC-705⇒uConsole(WFview⇒WSJT-X)
・送信時:uConsole(WSJT-X⇒WFview)⇒IC-705
このWFviewとWSJT-Xの間を繋ぐには送受信それぞれループバック・オーディオを構成する必要が有る。
具体的な構成手順(Windows、Linux)については、WFviewの公式サイト内「Loopback Audio Devices in Linux」で詳しく解説されている。
WFview
uConsoleとIC-705をWiFI接続し、IC-705を制御するコントロール信号と送受信時のオーディオ信号の遣り取りを行うアプリ。
インストール


最新版(Debian用は現時点で2.03)を望む場合はソースを入手しビルドする必要が有るが、今回は手軽に「Add / Remove Software」アプリケーション経由でインストールした。(バージョン1.60)
バージョンはやや古いものの、IC-705との接続用途のみなので特に影響は無いと思う。
実際に何度か暫く運用して、WiFi接続や音声入出力のトラブルには全く遭遇していない。
検索結果から対象ファイルのチェックボックスをチェックして右下に有る【Apply】ボタンをクリックするとインストールされる。
※最新版のソースファイルと詳細なビルド手順はWFviewの公式サイトで提供されている。
セットアップ

・Radio Connection:「Network」
・Network Connected Radios
Hostname:「IC-705のIPアドレス」
Control Port:「50001」
Username:「ネットワークユーザー1のユーザーID」
Password:「ネットワークユーザー1のパスワード」
Sample Rate:「16000」
Audio Output:「hw:CARD=Loopback,DEV=0」 ※作成したループバック・オーディオ
Audio Input:「hw:CARD=Loopback_1,DEV=0」 ※作成したループバック・オーディオ

・Modulation Input:「LAN」
・Data Mod Input:「LAN」

・□Enable RigCtld:チェックを入れる
・Port「4533」
設定内容については公式サイトのドキュメントに詳しく記載されている。
WSJT-X
FT8などデジタルモードでの交信を行うアプリ。
インストール

こちらも「Add / Remove Software」アプリケーション経由でインストール。
検索結果から対象ファイルのチェックボックスをチェックして右下に有る【Apply】ボタンをクリックするとインストールされる。
※Raspberry Pi用にビルドされた最新版はWSJT-Xの公式サイトから入手出来るが、現時点ではアプリケーション経由も最新版(2.7.0)になっている。
セットアップ

・無線機:「Hamlib NET rigctl」
・CAT制御
ネットワーク・サーバ:「127.0.0.1:4533」
・PTT方式:「CAT」
・送信オーディオ入力端子:「後面/データ端子」
・モード:「Data/Pkt」
・スプリット:「疑似スプリット」

・サウンドカード
入力:「plughw:CARD=Loopback,DEV=1」/「モノラル」 ※作成したループバック・オーディオ
出力:「plughw:CARD=Loopback_1,DEV=1」/「モノラル」 ※作成したループバック・オーディオ
※その他一般設定などは割愛。
ちょっとしたトラブルシューティング(音が出なくなる)
音声出力先は内蔵スピーカー「RP1-Audio-Out」になっているのに、FT8運用後にSDR++ Brown等のサウンド出力を使うと内蔵スピーカーから音が出ないことが有る。
この場合、一度「Loopback」(上下どちらでも可)に切り替えた後で再度「RP1-Audio-Out」に戻すと復旧する。

運用チェック

IC-705を起動しておき、先ずはWFviewを実行…特に操作不要でIC-705と接続し、画面上にはスペクトラムとウォーターフォールが表示される。
FT8運用時には使わないので表示を停止※してウィンドウを最小化しておく。
※ウォーターフォール下の中程に有る【☑ Enable】のチェックを解除…上の画像はチェックが入った状態。

続いてWSJT-Xを起動。
こちらもセットアップに問題が無ければ受信デコード状況が表示される。
メインとウォーターフォールのウィンドウはサイズ保存されるものの、起動時に表示位置が画面中央に初期化されるため、都度再配置が必要なのが少々手間。
受信は問題無く、デコード状況はメインPCと比べても遜色無し。
送信も問題無し…まだログ転送(オンラインログサービスへのアップロード)環境が無いため、一局と交信していただいて、ひとまず終了。
アップロード先が複数(eQSL.cc/LoTW/QRZ.com/ClubLog/HRDLOG/HamQTH)有って手動でアップロード※するのは結構大変なので、今回の動作確認後直ぐにログ管理環境を構築している。【別記事で公開】
※WSJT-XのADIFファイルを各サービスのWebサイトからアップロードする。
ちなみにメイン環境ではQSO完了後にQRZ.comを除いてJTAlertとGridTracker経由で自動アップロードしている。
(QRZ.comはAPIを使ったWebアップロードが有償オプションのため、LoTWから手動でインポートして対応。)
余談
IC-705とのWiFi接続にトライする前に、WSJT-Xの確認でFT-818ND(Pocke IF817G)とのUSB接続を試みたがUSB-Serial接続が上手くいかない。
「lsusb」ではCH340USB-Serialデバイスとして認識され、CH340/341ドライバも組み込まれているのだが、「dmesg」で確認するとttyUSBの生成時にエラーになっている。
他のRaspberry Pi環境では問題無く接続してFT8運用も出来ているため、uConsole側(ハード and/or システム)に要因が有りそう。
試しに単純なUSB-Serial変換ケーブル(CH340使用)を使ってみても同様にttyUSBが生成されない。
尚、同様のトラブルで要因としてよく挙げられている「BRLTTY」は元々インストールされていないため関係無し。
【追記:2025/7/10】 使用していたLinux Kernel_6.12.34に問題が有ったようで、その後公開されたLinux Kernel_6.12.35へアップデートしたところ呆気無く解決した。 現在はLinux Kernel_6.12.36が公開されている。
かなり調べて同様の事例への様々な対処を試みても解決はおろか前進もせず、ひとまず保留。
それなら当初の予定通りIC-705とのワイヤレス接続を目指そうというわけで、今回の環境構築に取り組んでみた次第。