今風の見えるラジオ…Malachite DSP SDR REceiver HQ

【この記事の所要時間: 99秒】

数年前まで、見えるラジオなるサービスがあった。(サービス提供期間:1994年~2014年)
FM多重波を利用して送信された文字情報による番組情報やニュースを内蔵の液晶ディスプレイで見ることが出来るラジオで、一般的なラジオ形態(ポケット、ポータブル)の他にPCカードタイプも有り、ノートPCなどに装着してラジオを「聴いたり」「見たり」していた。

今風の見えるラジオといえば…やや大きめの高精細カラー液晶ディスプレイ(昔の見えるラジオはテキスト数行が表示されるモノクロディスプレイ)が搭載され、各種情報やスペクトラムスコープ表示が出来る、いわば「電波を見る」ものになるだろうか。

数年ほど前からSDR(Software Defined Radio)という各種機能をソフトウェアで構成・制御出来るラジオを見かけるようになった。
PCにUSB接続してアプリケーションで操作するものや、液晶ディスプレイを搭載して一般的なラジオのように単体で使えるものなど様々。
ラジオ好きな自分が見逃すはずはなく、中でも液晶ディスプレイ搭載タイプは以前から興味はあったのだが…様々な理由でなかなか踏み出せなかった。

その踏み出せなかった理由というのは…。

  • 種類の多さ
    オリジナルはロシア製だが、情報が公開されていることで例によって中華製のコピー品(Malahit)が大量に作られて、市場には多種多様なモデルが出回っている。
    大半が劣化コピーで劣化具合も様々な結果、中には明らかなハズレ品もあり、どれが当たりなのか見極めるのが難しそう。
  • 品質に対する不安
    上にも書いたようにコピー品故に品質もバラバラで、パーツ自体も劣化コピー品だったり正規品でも同じシリーズ中の下位グレード(明らかに性能へ影響有り)が使われている、プリント基板の作りが悪い(明らかな設計ミスが残ったままのものも)、全体的な組付けが雑…など、万が一ハズレを引いたら自分で対処するのは難しそう。
  • 外観が気になる
    自分でケースを作れるのなら基板剥き出しでも構わないが、やはり最初からケースに入った物がいい。
    ケース入りのモデルも何種類か有るものの、プリント板を箱状に組み上げた物(ハンダ付けで固定したり、組木細工のように組み合わせたり)や無骨な金属箱など、ちょっと今一つ。
    割と良い感じのデザインもあるが残念ながらサイズが大きい。
  • ファームウェア問題
    SDRなのでソフトウェア(ファームウェア)が要だけど、殆どの製品(例外は知らない)にインストールされているのは、大幅に機能制限されているデモ版か不法にロック解除した海賊版(アップデート不可)のファームウェア。
    真っ当に使用するために、正規版のファームウェアをインストールしてライセンスを入手(購入)しアクティベートするのは結構手間が掛かる。(ライセンス料もけして安くはない。)

今風の見えるラジオ的な物自体は手持ちのアマチュア無線機(IC-7300、IC-705)があるが、手軽に使えるポータブルラジオタイプも欲しい。
久しぶりにまたSDRが気になって情報収集をしていたら、上記の問題が全て対処され(最も品質が良いとされているモデルをベースに現時点で判明している不具合に対処…高品質パーツへの交換や回路定数の見直しなど)、コンパクトでデザインの良い金属ケースに収められ、最新の正規版ファームウェアがインストールされた(ライセンス料も価格に含まれている)「高品質な完成品」が有志により頒布されているのを知り、早速購入した。

AFNを受信中

Malachite DSP SDR Receiver HQ
「KG-ACARS HFDL VDL MCAに感謝 受信方法 受信記録のブログPlus RTL-SDR Ando Malachite/Malahit DSP」(ゆうちゃんのパパ さん)

右側面

上から
・ボリュームツマミ(音量調整)…ツマミを手持ちの物に交換
・チューニングツマミ(受信周波数調整)…ツマミを手持ちの物に交換
・充電インジケーター(充電時:赤色/充電完了時:緑色)
・ヘッドホン端子(FMステレオ放送受信時はステレオ出力)
・充電/通信用USB-C端子(PCに接続すると外部アプリケーションで制御可能)
・プッシュSW(電源ON/OFF、液晶ディスプレイ消灯/点灯)
ちなみに、電源をOFFにすると(プッシュSWを一度押して液晶ディスプレイを消灯した後、指を離して再度長押し)、「73」のモールス符号(ーー・・・ ・・・ーー 「さようなら」の意)を模したビープ音が流れる。

※【2021/10/23】ファームウェアを1.10dにアップグレードしたら一度長押しするだけでOFFになるようになった。他では見聞きしない事象なので個体差かもしれない。

左側面

受信用アンテナ接続端子(SMA)

サイズ感

NanoVNA-F(4.3インチ液晶ディスプレイ搭載)と比較。
突出部を除くと縦と横はほぼ同じで、厚さは本製品が三割増しくらい。

併せて購入した物

ロッドアンテナ、マッチングトランスアダプタ、L型アダプタ

本製品にはアンテナは付属していなくて、当然ながら内蔵アンテナも無いため、別途SMA接続のロッドアンテナを購入。
アンテナの長さは短縮時13cm/伸長時49㎝(実測)。
また、ロッドアンテナはハイインピーダンスなので、そのまま受信機(インピーダンス50Ω)に接続した場合はインピーダンス不整合で受信効率が低下するため、インピーダンスを整合するマッチングトランスアダプタも購入した。
アンテナ自身は根元で折り曲げられるが、マッチングトランスアダプタも含めて直立させたかったので、L型アダプタも併せて用意した。(これは手持ち品)

ちょっと弄り

液晶ディスプレイ保護フィルムを貼り付け

液晶ディスプレイ搭載機器を購入したら、先ずは保護フィルムを貼り付けるのが今のお約束。
特にタッチパネルの場合は絶対必須とも言える。

こういう機器の場合はケースを開けて少し大きめのサイズのフィルムを貼ればとても簡単な作業だけども、この製品の場合は液晶ディスプレイの縁ギリギリの位置でトップケースの裏側に貼り付けられているため、一度取り外す必要がある。
また、開口部の四隅が丸められているため、一般的な保護フィルム(この製品の液晶サイズは3.5インチ非ワイド)ではそのまま貼れない。

用意したのはフリーサイズの保護フィルム(市販にちょうど合うサイズのフィルムが見当たらなかった…3.5インチ非ワイドを謳っていても実に様々なサイズが有る)とカードなどの角を丸くカットするコーナーカッター。
保護フィルムの剥離フィルムには方眼目盛が記されていてサイズ合わせがしやすい。
コーナーカッターには角丸の半径が三種類(S:3mm/M:5mm/L:8mm)有り、Sが開口部の角丸にちょうど合う。

切り出して角を丸くした保護フィルム。

貼り付け完了。
割とピッタリ貼れて、ゴミや空気の混入もなく、なかなか良い感じ。
いずれ貼り替える(かもしれない)ことを考えて、右端は少し隙間を空けている。

ツマミを交換

上の写真の通り、ボリュームとチューニング用のツマミは、オリジナルではシルバーで両方とも同径の物が使われているが、ブラックが好みなことと、チューニングツマミを少し大きくしたい…ということで、手持ち品と交換した。

ツマミ交換後
交換品(左)とオリジナル品(右)

オリジナル品は直径15mmΦ×高さ17mm(実測)。
交換品はボリューム用(上)直径11mmΦ×高さ15mm、チューニング用(下)直径20mmΦ×高さ15mm。
チューニング用に径の大きな物を使えるように、使用頻度の低いボリューム用を出来るだけ径の小さな物にした。
ボリューム用ツマミを小径にしたことでチューニング用ツマミが回し易くなった。

尚、20mmΦを超える径のツマミは、本体を横に寝かせて置いた際に設置面に触れる可能性が有る。

オリジナル品

オリジナル品は樹脂製ベースに薄いアルミ製カバーを被せた構造で軽量。
この重さを増したかったというのも今回ツマミを交換した理由の一つ(交換品は全てアルミ製でやや重め)。

スタンド

本体の底部は(上部も)丸くなっているため、そのままでは立てて置けない。
なので、手持ちのスマホ用携帯スタンドを使うことにした。

使用時

本体と同じくアルミ製シルバーなのでデザイン的に合う。
接する部分には滑り止めと接触傷防止のシリコンテープが貼られている。

折り畳み時

かなり薄くなり、携帯し易い。

底面

底にも滑り止めのシリコンテープが貼られている。

置いた感じ

なかなか良い感じになったが、ちょっと動かす際に掴みどころが無いので、何か取っ手的なものを付けたい。

早速お試し受信

ロッドアンテナとマッチングトランスアダプタ

まずは併せて購入したロッドアンテナとマッチングトランスアダプタの組み合わせ。

FM放送受信(レトロスケール表示)
中波放送受信…不可

FM放送はまぁまぁ受信出来るものの、受信環境(日中、鉄筋集合住宅室内)のせいか、中波放送は在京7局全て不可…強いて挙げれば最も強力なラジオ日本のみ辛うじて音声が聞き取れる程度か。
このクラスのロッドアンテナでの中波放送の受信は厳しいという評価が一般的なので仕方無し。
安価なポケットラジオでさえ良好に受信できるのは内蔵されているフェライトバーアンテナのおかげ…改めて優秀さを実感するね。
このMalachiteもフェライトバーアンテナを使えば中波放送の受信がかなり良くなりそう。

広帯域ループアンテナ(パッシブ)

次は普段IC-705で使用している広帯域ループアンテナ(パッシブ)を使ってみる。

FM放送受信(スペクトラム表示)
FM放送受信(レトロスケール表示)
中波放送受信
短波放送受信

今度は中波放送も良好で、在京7局全て高感度受信出来た。
受信レベル的にはIC-705よりちょっと下がる程度でなかなか優秀。
FM放送も同様に受信レベルが上がった。
尚、FM放送受信時はスペクトラム表示の他に、昔のラジオ風なレトロスケール表示も選択できる。