CommRadio CR-1 … 10年ぶりの再会

【この記事の所要時間: 1055秒】

昨年末、一台の受信機を入手した。
CommRadioというアメリカのメーカーから2013年に発売されたCR-1という製品。(既に廃番)

CommRadio CR-1(後期モデル)…導音ダクト(後述)を装着している

出会いは10年前

WRTH 2014に掲載されたレビュー記事
最高評価「Excellent」
WRTH AWARDS 2014を獲得

発売された年に刊行された書籍「WRTH(WORLD RADIO TV HANDBOOK)2014」のレビュー記事で初めて目にした。
当時は何か無骨なデザインの受信機だな…と感じた程度で特に強い印象は無かったが、評価がかなり高く、WRTH AWARDS 2014に選ばれたという点にちょっと興味を覚えた記憶がある。
この書籍はBCL/SWLのバイブルともいわれ、就職後BCLを再開し熱中していた時期(2000年〜2014年)にはほぼ毎年購読していた。
(最も熱中していた頃はAR7030Plus/PERSEUSとALA-1530を使っていたが…モチベーションの低下で一気に手放した。)
唯一手元に残していた2014年版を数年前の物探し中に発掘し、この受信機の記事を再度見掛けて急に気になり始め、機会が有れば入手したい…と考えるようになった。

とはいえ、(このジャンルでは)余りメジャーでは無いメーカーの製品で、マイナーチェンジモデル(CR-1a)も含めて出荷台数は少なく、一応日本国内でも販売されていたものの販売数は少なかった模様。
※CR-1aは細部の違い(後述)が有るものの基本機能や性能の違いは全く無く、ソフトウェア(ファームウェア)も同じものを使用出来る。

出荷数の少なさに加えて発売から10年経ち、新品の入手はもはや不可、中古でさえもショップやオークション、フリーマーケットで見掛けない…極稀に見掛けても既に売却済。
eBayでは今も何台か見掛けるものの程度が悪かったり(写真でも明らかな傷や汚れが有る、付属品が全く無い、等)、高価だったり(円安のせいもあり現行時の新品価格相場を大きく上回り、日本への送料を含めるとほぼ二桁万円…無理)。
暫く前にヤフオクで出品があり、もちろん入札したものの高値更新されてやむなく見送り…。(自分の入札スタイルは出せる上限額を入れたら後はたとえ更新されようと終了まで放置。)

その翌週に別の出品が有り、今度は無事落札することが出来た。
当然中古だけど、ワンオーナー品で前所有者が新品購入した後殆ど使わず仕舞い込まれていたもの、元箱を含めて付属品が全て綺麗な状態で揃っていて、本体も新品同様の美品、後期モデルでソフトウェアも最新版、内蔵バッテリーの劣化も特に見られず満充電で数時間の使用が出来ている。
ちなみに落札価格は、先に高値更新されて見送った出品(前期モデル、本体のみ、程度やや低)よりも安く、eBay出品相場の1/3程度(しかも送料無料)だったことを申し添えておきたい(^^ゞ

外観とスペック

前面

左から、ヘッドホン端子(φ3.5mm)、マルチダイヤル、OLED(128×64ドット/38×19mm)、各種機能ボタン、チューニングダイヤル。
マルチダイヤル:
・単回転⇒音量調整
・短押し⇒電源OFF状態では電源ON/電源ON状態では機能やパラメータ設定
・長押し⇒電源OFF
チューニングダイヤル:
・単回転⇒周波数調整(既設定ステップ単位)
・短押し⇒増減対象桁選択
尚、各種機能ボタン左列二段目の【STEP】は前期モデルでは【SCAN】だったが、「機能的にスキャンじゃないよね…」ということで変更されたらしく、機能的な違いは無いとのこと。
※マイナーチェンジモデル(CR-1a)では、調達の関係でOLEDが変更になり、表示色がライムグリーンからアンバー(橙色)に変わっている。

後面

左から、DC入力(外径φ5.5mm/内径φ2.1mm センタープラス)、miniUSB端子(給電/充電、ソフトウェア更新時のPC接続)、外部スピーカー端子(φ3.5mm)、中波/短波用外部アンテナ端子①(φ3.5mm)、中波/短波用外部アンテナ端子②(BNC-J)、VHF/UHF用外部アンテナ端子(BNC-J)、外部アンテナ端子の下にアース端子(プラスネジ)。
※マイナーチェンジモデル(CR-1a)では、miniUSB端子にI/Q信号出力が追加され、中波/短波用アンテナ端子①が廃止された。
前述のOLED変更と、このI/Q信号出力の追加・中波/短波用外部アンテナ端子①(φ3.5mm)の廃止がマイナーチェンジ内容の全て。

天面

ケースは前面パネルがアルミ製・その他がスチール製で構成されていて、いずれも厚い部材なので見た目よりも重さがあり、ガッシリしている。
フットプリントはCDケースとほぼ同じ(突出部を除く)、本体のみの脚部を除いた厚さは通常のCDケース4枚分程度と、かなりコンパクトな受信機。

底面

底面の四隅には一際大きく感じられるφ30×25mmほどのゴム脚が装着されており、中央前面寄りにスピーカーが設置されている。
この本体の厚さとほぼ同じ高さのゴム脚で本体を持ち上げることにより、操作性を向上し、スピーカーからの音の出を良くしている。

受信周波数(LF:150kHz〜500kHz) ※仕様外…性能制限有り
MF/HF:500kHz〜30.000MHz
VHF:64.0MHz〜260.0MHz
UHF:437.0MHz〜512.0MHz
※放送(SWL)/アマチュア無線の各メーターバンド選択での切り替えが可能
※周波数移動ステップ設定可能
受信モードAM、CW、LSB、USB、FM
受信フィルタAM:2.6kHz、5kHz、7.5kHz、15kHz
CW:500Hz、1.0kHz、1.8kHz、2.2kHz、2.6kHz
LSB/USB:1.8kHz、2.2kHz、2.6kHz
FM:200kHz
メモリ64(8×8ページ) ※メモリスキャン可
内蔵バッテリー18650×1 ※交換可
サイズ幅143×高62×奥行155mm(突出部含む)
重量約680g
CommRadio CR−1 スペック概略

ACアダプタ

ACアダプタ(12V/800mA)

ACアダプタは元々付属していない。
DC入力の電圧範囲は6V〜18V。
マニュアル等には消費電力(負荷電流)の記載が見当たらなかったが、海外のレビュー記事で「充電しながら使用すると最大で12V/300mA程度・満充電状態では12V/100mA程度」という記載を見つけ、手持ちの12V/800mA出力でプラグサイズと極性が合致するトランス式非安定化ACアダプタを使用している。(ケーブルには手持ちのフェライトコアを装着。)

トランス式非安定化ACアダプタは負荷電流に応じて出力電圧が変動するため、無闇に出力電流が大きなACアダプタを使用すると電圧過多になる恐れがある…とTwitterで教えていただいた。
その際に紹介されたWebページ「トランス式非安定化ACアダプタの出力特性/マルツ」で確認したところ、より消費電流が少ない満充電状態の負荷(12V/100mA)に対して、12V/800mAのACアダプタを用いた場合に加わる電圧は最大で15.87V(AC100V時)/17.6V(AC110V時)ということで、ひとまず規定の入力電圧範囲に収まっている。
自宅のAC電圧は最大でも104V程度なので問題ないだろう。
(日本のAC電圧変動は101V±6Vに規定されているとのこと。)

尚、マニュアルにはDCプラグの外径がφ5mmと記載されているが、自分で探した限りではφ5mm/φ2.1mmのプラグは見当たらず、試しにφ5.5mm/φ2.1mmのプラグを装着したところピッタリだった。
誤記なのか慣習でそういう記述なのかは不明。

miniUSB端子からの給電/充電も可能で、USB-A⇔miniUSBケーブルも付属している。
他に、片端がバラ線のDCプラグケーブルも添付。

プチカスタマイズ

ネジ交換

ケース固定ネジを交換

ケースの固定ネジ(計9本…ゴム脚固定ネジを除く)はプラスのナベネジが使われていたので、単に好みということで全て六角穴のナベネジ「ボタンキャップ (ユニファイ 並目[UNC]・全ねじ)#4-40×3/16」に交換した。

導音ダクト作成

CR-1のスピーカーは底面に有り、ゴム脚でスペースを空けているとはいえ、前方への音の出方が少なくなってしまい、また、接地面の素材によっては音がやや籠もった感じになる。
この前方への音量と明瞭度を更に向上させるべく、音を前に導くダクトを装着することにした。

外側(左:ビフォー ⇒ 右:アフター)
内側(左:ビフォー ⇒ 右:アフター)

ケーブルの引込口に装着する防雨カバー(パナソニック 小形防雨入線カバー WP9171)を流用。
形状の加工はせず、メーカー名を切削して全体を艶消し黒で塗装し、CR-1に吸着する部分にゴム磁石テープを貼り付けている。
また、スピーカーからの音をより良く導けるよう、ABS板のスロープを内側に取り付けている。
ビビリ音を避けるためスローブ下の空間にコーキング材などを充填した方が良いだろうけど、そこまで音量を上げることは無いと思うので、先ずはこの状態で使ってみよう。(スローブは単に嵌め込んでいるだけなので、着脱は容易。)

サイズ感(横幅)
サイズ感(奥行き)

サイズ的には横幅/奥行きともに程良く、また厚さもゴム脚の高さ内に十分収まる。

装着した様子

使用したゴム磁石テープはネオジウム使用でかなり強力、上下逆さ(通常使用状態)にしても外れたりズレる心配は無い。

オプション品作成

直結型アンテナ分配器

外部アンテナ端子

CR-1の外部アンテナ端子は、中波/短波用とVHF/UHF用が個別に用意されている。
それぞれ専用のアンテナを用いるのが理想だけど、せっかく本体がコンパクトなので接続するケーブルはなるべく減らしたい。
また、先日入手した広帯域シールドループアンテナ AOR LA400から両方のアンテナ端子に接続したい。
できれば、CR-1に直結してLA400からのケーブルは一本にしたい。
この三つの希望を実現するべく、受信用アンテナ分配器を作成した次第。
製作記事の中に何度か登場する「思いついたこと」というのが、このCR-1への直結構造だった。

CR-1の外部アンテナ端子とアンテナ分配器の比較

CR-1の外部アンテナ端子に直結するため分配器側のコネクタにはBNC-Pを用い、間隔も正確に合わせた。
上の写真では位置関係(高さ)により間隔が異なるように見えるが、実際はピッタリ合致する。
分配器の艶消し黒色塗装がCR-1の本体と合っているのみならず、LA400のコントロール部ケースがおそらく同じタカチ TDシリーズを使っているらしく、まったくの相似形。

装着した様子(横から)
装着した様子(前から)

L型変換コネクタを介して入力部が上向きになるように装着すると、ホイップアンテナ等を直結して使用出来る。
BNCコネクタは容易に回転するため、使用コネクタが一個だけだとアンテナが横倒しになる恐れがあるが、二個のコネクタを使っているため倒れることなく安定する。(ガッチリ固定ではなく僅かに遊びがある。)
ただ、重量のあるアンテナを直結する場合は、CR-1本体への負担を抑えるためアンテナ分配器を下から支える仕組みが必要だろう。(アンテナ分配器自身の重さは146g。)

お試し風景

AOR LA400 & CommRadio CR-1
AFNは非常に良好(S9+30dB)
LA400のコントローラー部とアンテナ分配器で使っているケースは同じタカチ TDシリーズなのか、見た目がソックリ
LA400とアンテナ分配器の間はもう少し短いケーブルで繋ぐとスッキリするかな

昨日のお試し風景。(場所:自宅室内のテーブル置き、窓からの距離は最短で2mほど/時間:午前10時頃)
在京中波放送局(NHK第一/第二、AFN、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送)とラジオ日本、ラジオnikkei(2波)はいずれも「S9+10〜+30」の受信強度、FM放送は受信強度が表示されないが概ね良好、エアバンド(120.5MHz)も最良でS9まで上がる。
昨夜(2022年12月31日)はNHK WORLD-JAPAN(11815kHz)で紅白を聴いてみたりもした。