ACアダプタ用電圧/電流計を作成

【この記事の所要時間: 652秒】

一般的なACアダプタには、スイッチング式/トランス式(安定化、非安定化)といった種類が有る。
スイッチング式>トランス式(安定化)>トランス式(非安定化)の順で発生ノイズが少ないため、オーディオ機器や無線機器ではトランス式(非安定化)を使うことが多い。
ただ、非安定化トランス式ACアダプタは出力電流と機器の消費電流の差によって出力電圧が変動し、消費電流が少ない機器に大電流出力の物を使うと出力電圧が表記電圧より増大し、機器の規定入力電圧を超過する恐れがある。
大が必ずしも小を兼ねない。
但し一方で、機器の消費電流が著しく少ない状況(たとえば内蔵バッテリーが満充電状態で追加の電力消費が無い場合など)では、出力電流が低い非安定化トランス式ACアダプタの方が出力電圧が大きくなるケースもあるため要注意。

ACアダプタが付属していなくて、且つ、メーカー推奨のACアダプタ(純正オプション)が不明な場合や、付属品やオプション品がスイッチング式のためノイズの少ないトランス式(非安定化)に置き換える場合など、機器の消費電流が分かれば、たとえば次のようなサイトを参考にして適合するACアダプタを選定する。
⇒【トランス式非安定化ACアダプタの出力特性/マルツ

もし機器の消費電流が分からない場合は…測定するのが確実。
両端がDCプラグ(オス/メス)の中継ケーブル的な物を作り、途中に測定点(端子)を設けてテスターで測れば良いだろう。
もしかして、そういう用途の小物(製品)が既に有ったりしないだろうか…と調べたら、さすがにそのものズバリの製品は無かったが、市販の電圧/電流計を使ったACアダプタ用電圧電流計の自作記事を見つけた。
⇒『ACアダプタ用電圧電流計』(高田馬場の組み込み屋さん-電子工作、回路設計、ファーム TIPS)

大変判りやすい記事なので早速参考にさせていただき作成してみた。★情報公開に感謝します★

ACアダプタ用電圧/電流計

外観

タカチのABS製ケース(SW-85B)を使用し、前面に電圧/電流計を装着、後方からDCケーブル(入出力)を出している。
DCプラグはオス/メスとも、手持ちで最も多い外径φ5.5mm/内径φ2.1mmを選択…もし他のサイズで計りたい場合はサイズ変換アダプタ(5.5mm/2.1mmから変換するアダプタは多種出ている)を使用する。

使用した電圧/電流計はDER EE/DE-2645-05RR
・動作電源電圧:DC 4.5V〜24V(被測定電源から供給可、この場合は電圧測定範囲がDC 4.5V〜24Vになる)
・電圧測定範囲:DC 0V〜100V(測定誤差:0.5%±2dgt、分解能:0.1V)
・電流測定範囲:DC 0A〜999mA(測定誤差:1%±3dgt、分解能:1mA)
・自己消費電流:約20mA

測定電流が1Aを超える場合は、同じシリーズで10Aまで測定出来るDER EE/DE-2645-02に交換する。(コネクタの差し替えだけで交換可。)
・動作電源電圧:DC 4.5V〜24V(入力電源から供給可、この場合測定範囲はDC 4.5V〜24V)
・電圧測定範囲:DC 0V〜100V(測定誤差:0.5%±2dgt、分解能:0.1V)
・電流測定範囲:DC 0A〜10A(測定誤差:1%±3dgt、分解能:0.01A)
・自己消費電流:約20mA

内部と底板

電圧/電流計にDCケーブルをコネクタ接続しているだけの単純な構造。
写真ではわかりにくいが、DCケーブルを通している穴にはグロメット(ゴムブッシュ)を嵌め込んでいる。
コネクタは大きい方(3P)がVHタイプ、小さい方(2P…片側のみ使用)がXHタイプ。
底板には滑り止めのゴム脚を装着。

底板内側

ケーブルに引っ張られて動くため、底板の内側には鉛板のウェイトを貼っている。

実測

CommRadio CR-1

規定入力電圧

規定の入力電圧は6V〜18Vとかなり広い。

使用ACアダプタ(トランス式非安定化タイプ)

元々ACアダプタは付属しておらずメーカーのオプション設定も無いため、ネット上で見つけた機器の大まかな消費電流をもとに下記のサイトで適合しそうな出力電流を調べて、該当するトランス式非安定化ACアダプタを探した。
⇒【トランス式非安定化ACアダプタの出力特性/マルツ

アイコー電子のVSM-1282、出力電圧12V/出力電流800mA。

電源OFF時

電源OFF時は電圧15.9V/電流164mAで、規定入力電圧の範囲内。
電源がOFFでも流れているのは内蔵バッテリー充電のためだろうか。
(仕様で電源がONじゃないと充電されない…と何かで見た記憶があるけれども…はて?)

電源ON時

電源ON時は電圧15.7V/電流217mAで、こちらも入力規定電圧の範囲内。
充電しながらの使用なので、ほぼ最大値に近いと思われる。

AOR LA400

規定入力電圧

規定の入力電圧は15V単一表示、増減の変動範囲は不明。

使用ACアダプタ(トランス式非安定化タイプ)

こちらは付属品。
アイコー電子のVSM-1232、出力電圧12V/出力電流300mA。

電源OFF時

電源OFF時の電圧は18.2V…規定入力電圧の約二割増し。

電源ON時

電源ON時は電圧16.0V/電流93mA、規定入力電圧との差は一割未満…許容範囲か。

Jim M-75(VHF/UHFプリアンプ)

規定入力電圧

規定の入力電圧は12V単一表示、増減の変動範囲は不明。

使用ACアダプタ(トランス式非安定化タイプ)

付属は無く、メーカーオプションも無いが、海外のショップで12V/300mAのACアダプタが推奨品として紹介されていたので、手持ちに有った同等出力のACアダプタを流用。
アイコー電子のVSM-1232、出力電圧12V/出力電流300mA。
但し、推奨品はスイッチング式のため、トランス式非安定化タイプでは出力電圧が大きくなりすぎるかもしれない。

電源OFF時

電源OFF時の電圧は17.6V…規定入力電圧を五割近く上回り結構大きい。

電源ON時

電源ON時は電圧16.8V/電流32mA、規定入力電圧との差は三割超…ちょっと宜しくない。
許容範囲は不明だけど、もう少し出力電流が少ないACアダプタに換えた方が良さそうだ。
とはいえ、300mA未満のトランス式非安定化ACアダプタは見聞きしたことが無いので…スイッチング式で妥協するしかないかも。

【追記 2023/1/10】低出力ACアダプタへ交換

トランス式非安定化タイプで12V/100mA出力のACアダプタが出てきたので、交換することにした。

iCOM BC-74J

アイコムのハンディトランシーバ用だろうか、型番で調べてみたところ既に廃番になっている様子。

変換コネクタ(外径φ3.5mm/内径φ1.35mm⇒外径φ5.5mm/内径φ2.1mm)

ACアダプタの出力プラグは細いタイプなので、対象機器に合わせて変換コネクタを使用する。

電源OFF時

規定入力電圧(12V)に対する増加は二割未満。

電源ON時

規定入力電圧(12V)に対して約一割増し…これくらいなら許容範囲かな。