[FT-818] 折り畳みアンテナ基台作成

【この記事の所要時間: 1225秒】

FT-818でラジオを聴いたりGAWANT等のコンパクトなアンテナで手軽に交信をする際に、アンテナを本体に直接装着してFT-818自体の傾き(ESCORTのスタンド使用/未使用)に応じて角度を可変して垂直に立てて固定出来、使わない時には(短いアンテナなら装着したままで)FT-818の側面に沿わせて倒しておけるアンテナ基台が欲しい。
更にそれほど嵩張らず見た目も良ければ言うことなし。

単に立てるだけなら前後コネクタにライトアングルタイプの変換コネクタを介して取り付けるのが手軽でコストもさほど掛からないが…。

前部コネクタ

  • BNCコネクタは嵌合時に固定されないので衝撃や風で横倒しになる恐れがある。
  • 重い/長いアンテナを装着した場合、FT-818本体(コネクタ取り付け部分)へ掛かる負担が気になる。
  • BNC⇔BNCのライトアングルタイプ変換コネクタには、内部で接触不良を起こして著しく特性が悪いハズレ個体が有り、最悪の場合はFT-818の終段を破損する恐れも有るとか。

後部コネクタ

  • Mコネクタにある固定爪の位置(製品個々でバラつき有り)によっては左右斜めに傾いてしまう。
  • 装着しているUSB-IF(Pocke IF817Ⅱ)と干渉するため、M⇔Mのライトアングルタイプ変換コネクタは使用出来ず、M⇔BNCでも対向するBNC-Pコネクタ部分が太い(一部のホイップアンテナのように樹脂/ゴムで覆われている)物は接続出来ない。

そして、いずれもスタンドなどで本体を傾斜させるとアンテナも後方に傾いてしまう。

まぁ、前後左右の傾きは少々であれば実用上問題無いし設置場所によっては本体自体が傾くので、あまり拘っても仕方がないと思うけど…趣味のものだから自身の主観で拘りたい。
それに、勝手に倒れたり本体側へ過剰な負担(物理的、電気的)が掛かるのは絶対に避けたい。

これらを解決する(おそらく)唯一の市販品として、自分も使っているハムショップ マッコイさんのサイドアンテナ基台が有るが、コネクタボックス(真っ黒なプラスチック箱)が少々無骨で嵩張るのが残念、また、角度を変えられるものの完全に倒すのは難しい。

無いなら作ろう…とネットで情報収集していたところ、要の折り畳み構造をSONY製CB無線機のアンテナ取り付け金具を流用して実現した製作記事を見つけたので、早速参考にさせていただいた。
⇒『FT-817 アンテナスタンド完成』(JF3NEPさん)

長波〜短波対応のコンパクトアクティブアンテナ(SV2CZF / RF-MWA30)を装着

部材

使用部材一式
  • アルミパイプ(外径φ10mm/内径φ9mm)
  • ブラケット(120mm×30mm×厚さ3mmのアルミ板・黒色アルマイト処理)
  • アンテナ取り付け金具(SONY ICB-650から流用、付属のネジは使用しない)
  • BNC-Jコネクタ(50Ω、パネルマウント用、GND端子有)
  • BNC-Pコネクタ(50Ω、ライトアングル、ケーブル接続済)
  • ネジ(M2.6×16mm×4本…FT818への固定用、M3×8mm×3本…取り付け金具の固定用)
  • ワッシャー(M2.6用×4枚、M3用×3枚)
  • Oリング(大12mm/8mm×1個、小:7mm/3mm×1個)
  • シリコンゴムシート(適宜)
  • 熱収縮チューブ(適宜)

ブラケット作成

ブラケット作成図

アルミ材とはいえ厚さ3mmの板を切り出して多くの穴(φ4mm×8、φ16mm×1)を手動工具で正確に開けるのはかなり難しいし見た目にも拘りたいので、個人向けの製作・加工を請け負っている業者へ表面処理(黒色アルマイト)と併せて依頼。
とても満足出来る仕上がりになった。
尚、FT-818に装着するネジはM2.6なので、この部分(左右端にあるそれぞれ二つ、計四つ)の穴はφ3mmが適正だけど、多少のズレや誤差を吸収できるように少しだけ大きめに。
また、当初は取り付け金具の向きが決まっていなかったため、どの向きでも対応出来るようにネジ穴は固定ネジ三本に対して四か所あけている。

アンテナ取り付け金具加工

ICB-650から取り外したアンテナ取り付け金具と使用部材一式

レバーを緩めるとアンテナ部分が回転し(或る程度任意の角度で)レバーを締めると固定される…今回の基台を実現するためには欠かせない要の部分。

古いCB無線機にはロッドアンテナの折り畳み部分に目的の機構が搭載された物が幾つか有るが、FT-818を前方から見て左側面に装着出来て(右側面だとブラケットで各種端子が覆われて使用出来なくなる)、BNCコネクタの組み込みとケーブルの引き出しが容易な構造の取り付け金具で、ジャンク品が豊富で安価な物…という条件で探してICB-650を選択。

早速ICB-650のジャンク品を入手し、取り付け金具を摘出した。
ちなみにこのジャンク品は、電池ボックス無し・電池液漏れ痕と端子等の腐食有り・PTTスイッチ破損・外観傷だらけ&マジックで書き込み有り・内部のケーブル断線有り・ロッドアンテナ曲がり凹み有り先端欠品…とまぁ見事なジャンク具合だったので、幸いに無傷だった取り付け金具を摘出した残りは全て廃棄処分した。

アンテナ取り付け金具部分
BNC-Jコネクタに合わせてネジを切ったアルミパイプ製スリーブを圧入

アンテナ取り付け金具の底部にある目隠し板を剥がして固定ネジを外すとロッドアンテナが抜き取れる。
このロッドアンテナが差し込まれていた部分にBNC-Jコネクタを取り付け、固定ネジが通っていた穴からケーブルを引き出す仕組み。

ロッドアンテナ差込口の内径φ9.9mmに対してBNC-Jコネクタのネジ部分は外径φ9.3mmであり、そのままでは固定出来ない。
ネジ部分にシールテープを巻き付けて嵩増しして接着するなど簡易的な方法もあるが、強固且つ交換可能な状態で取り付けたいので、内側にBNC-Jコネクタの固定ネジと同じピッチでネジを切ったアルミパイプをスリーブにしてネジ締めすることにした。

スリーブ作成

使用するアルミパイプの外径はφ10mmで取付金具の内径φ9.9mmより僅かに大きいため、30mm程の長さで表面を一皮剥く程度に軽く削る。
(削り過ぎると圧入しても再タップ時に空回りする恐れがあるので要注意。)
実際に使用するのは表面を削った長さ30mm程だけど、後述するタップ立て作業の都合で長め(60mm)に切り出す。
尚、アルミパイプの内径はφ9mmなので、BNC-Jコネクタ(ネジ部分の外径φ9.3mm)に合うタップを立てる際に削るなどの前加工は不要。

アルミパイプの切り出しでは今回初めてパイプカッターを使ったが、今まで金切り鋸で切断しヤスリで整形していたのに比べると遥かに早く楽に切断出来、しかも切断面が滑らかなのでヤスリ掛けも必要無し。
切削屑がほとんど出ないのもいいね。

空回りを防ぐためにアルミパイプの表面を削っていない側先端10mmほどが完全に潰れるくらいにバイスで強く挟んで固定し、表面を削った側からBNC-Jコネクタ固定ネジに合わせたピッチ(今回使用したBNC-Jコネクタでは3/8-24 UNF…ちなみにネジ部分が金属のコネクタは3/8-32 UNF)で、深さ15mmほどタップを立てる。
この潰れたり変形する部分を考慮して実際に使う分よりも長めに切り出した。

アルミパイプにタップを立て終わったら、ネジ穴側から30mm程を切り出す。
バイスを使ってアルミパイプのネジ穴側が外側になるように取付金具へ圧入し、端が取付金具の開口部と面一になるようにヤスリで整える。
最後に整形とバリ取りを兼ねて軽く均すようにタップを立て直せば出来上がり。

ブラケットは業者へ依頼したので、このスリーブの作成が今回最も苦労したところ。

Oリング(大)を通したBNC-Jコネクタをネジ込んで着脱具合を確認…ガタは少ないけど滑らかに回るため、接続したアンテナを外す際に緩みそう。
BNC-Jコネクタのネジ部分は樹脂製なので、樹脂にも使える緩み止め剤を調べてロックタイト425を購入。
早速使ってみたが、瞬間接着剤扱いだけあって即座に固着するし、低強度とはいえかなり強力で工具(ペンチ等)を使わないとおそらく回せない。
BNC-Pコネクタの着脱程度ではびくともしないだろう。

ケーブル接続

両端にライトアングルタイプとストレートタイプのBNC-Pコネクタが接続されたケーブル(50Ω)

FT-818に接続する側のBNC-Pコネクタをストレートタイプにするかライトアングルタイプにするか悩んだ。
Amazonで片側がストレートタイプ・もう片側がライトアングルタイプのコネクタが付いた50Ωケーブルを見つけ、線の太さも取り付け金具のネジ穴を通すのにちょうど良かったので購入。
FT-818の後部コネクタにM⇔BNC変換コネクタを介して接続するため、ケーブルの折り曲げ負荷をなるべく抑えられるように、実際に接続して試した結果、ライトアングルのBNC-Pコネクタを選択した。
ケーブルの長さを合わせて途中で切断し、取り付け金具のネジ穴に通してBNC-Jコネクタをハンダ付けする。
熱収縮チューブでの絶縁も忘れずに。

アンテナ取り付け金具のケーブル引き出し部分

ケーブルが通る穴はエッジが立っているので、ケーブルの傷防止としてOリング(小)を嵌める。
※ハンダ付けの前に、コネクタには先にOリング(大)を嵌めておき、ケーブルをOリング(小)⇒取り付け金具⇒熱収縮チューブの順に通しておく…どれか一つでも忘れるとやり直しになるので要注意。

組み立て

折り畳みアンテナ基台

アンテナ取り付け金具を三つの部分(ベース、コネクタ装着、レバー)に分解する。
ベース部分をブラケットの裏(FT-818本体)側から取り付ける。
続いて、ブラケットの表側からコネクタ装着部分とレバー部分をベース部分に取り付けて、付属のナットを締めて固定する。(ナットとボルトの先端が面一になる辺りまで締め込むとちょうど良い操作具合。)
尚、取り付け金具の動きが滑らかになるように、各部分の勘合部分にセラミックグリスを塗布しておく。
上の写真では外しているが、取り付け金具のボルト部分には目隠しのアルミシートを貼り付ける。

装着

折り畳みアンテナ基台(BNCコネクタ部分)
折り畳みアンテナ基台(ケーブル接続)

組み上がった基台をFT-818に取り付ける。
ブラケットとESCORTサイドガードの間には緩衝用にシリコンゴムシートを挟んでおく。
取り付け金具のベース部分がESCORTサイドガードの枠内にちょうど収まるので、横への張り出しが少なく、見た目もシンプルに取り付けることが出来た。
ESCORTサイドガードを装着していない場合もスペーサーを介せば取り付けられるが、アンテナを立てた状態でロックするとレバーが真下に向いてFT-818の底面より突出するので、別途スタンドか脚で嵩上げする必要がある。(ESCORTを装着していればスタンドを畳んだ状態でも問題無し。)

ケーブルが後ろに出る構造なので、後部のMコネクタにM-P⇔BNC-J変換コネクタを介して接続している。
また、後方への突出をできるだけ抑えるため、変換コネクタはストレートタイプではなくライトアングルタイプを使用。 
ちなみに、上の写真で使用しているM-P⇔BNC-Jのライトアングルタイプ変換コネクタはFT-818に対してしっかり垂直になる或る意味貴重な物(^^ゞ

使用感

GAWANT-7を装着
中波帯用バーアンテナを装着

レバー操作だけで折り畳みの角度を変えられるのは予想以上に便利で見た目も良し。
ESCORTサイドガードの前方は横に広がった形状でストラップループも有り、長い/太いアンテナを装着した場合は干渉するためFT-818の側面に沿わせて倒すことは出来ないが、短い/細いアンテナを使うとか未使用時はアンテナを外しておけばいい。
尚、取り付け金具をブラケットの表側に固定すると長い/太いアンテナを装着した状態でもESCORTサイドガードとの干渉を回避して倒すことが可能になる。
但し、その分張り出すし見た目も少々無骨になってしまう。

尚、殆ど使用しない前面のBNC-Jコネクタには黒色樹脂製のダストキャップを装着している。
一般的な乳白色樹脂製や金属製の物に比べて目立たないのがお気に入り。

ショートアンテナ(DIAMOND / RHF10)を装着し立てた状態
ショートアンテナ(DIAMOND / RHF10)を装着し立てた状態
ショートアンテナ(DIAMOND / RHF10)を装着し立てた状態
ショートアンテナ(DIAMOND / RHF10)を装着し倒した状態
ショートアンテナ(DIAMOND / RHF10)を装着し倒した状態
ショートアンテナ(DIAMOND / RHF10)を装着し倒した状態

普段は倒した際に干渉しないショートアンテナ DIAMOND/RHF10を常用する予定。
全長75mmと短いながら、144/430MHz帯の送受信とV/UHFの広帯域受信に対応していて、FM放送やエアバンド、鉄道無線、それと意外なことに短波放送が割と良好に受信できるので、ICF-PRO80とVX-8D(こちらはSMA版のSRHF10)でも常用している。

思案

出来上がりと使い勝手には大満足だけど、もし改良するとしたら本体側のコネクタ周りをもう少しコンパクトにしたいかな。
基台が回転する点を考慮してケーブルの長さに少し余裕を持たせたけれど、もう少し短くても良かったかも。 
ただ、今の長さだとFT-818の上に重ね置きしたATU-10に接続出来る。 
とはいえ、ATUを使うようなアンテナなら別付けのスタンド(ミニ三脚)に設置すると思うので、ケーブルは別付けにするだろうけれども。