[IC-705] AH-730&ATUエレメント導入

【この記事の所要時間: 1655秒】

屋外アンテナを色々検討して、比較的設置が容易な「ATUエレメント/ATU/カウンターポイズ」の構成に決定した。
前住居でも機材自体は全て異なるものの同じ構成で運用していたが、使用していた機材は転居前の大断捨離で全て手放したため新調。

先日新調したMLAも屋外設置は可能だけども防水構造では無く(特にチューニング機構やコンデンサーパック)、ベランダ内に置くとしても対策が必要。
構造的にも、バンド内のチューニングはリモート操作に対応しているものの、バンド変更にはコンデンサーパックの交換(4箇所でネジ留め)が必要なため、離れた場所への設置には余り適していない。

性能自体にはかなり満足しているんだけどね…室内設置でも全国や近隣国と交信出来ているし、今のコールサイン(転居後に旧コールサインを復活)で運用再開して一ヶ月ほどで交信数(全てFT8)が700局を超えたのも、このアンテナのおかげ。

使用機材/部材

ATUエレメント

ATUエレメントは長さ(7m前後)や軽量さ、シンプルで頑丈な構造、価格で検討して、ナガラ電子とCQオームがコラボした製品を選択。
⇒『OHM-6501ATE (OHM6501ATE) 6.5mアンテナチューナーATU用エレメント』(CQオーム)

肉厚のアルミパイプが使用されたしっかりした作りで、ロッドアンテナのように伸長し各段をネジで固定する構造。
全長6.5m(+付属給電ケーブルが約1m)、ATUを使用することで3.5~50MHzに対応する。

ATU

ATUは、IC-705と同メーカー品であり、サードパーティ製の変換ケーブルを用いることでIC-705からコントロール出来て、対応周波数範囲や最大定格入力の点からも希望を満たしていることから、iCOM AH-730 を選択。
IC-705と組み合わせて使う場合には幾つか条件(IC-705は外部電源供給で10W出力、AH-730へはIC-705と同じ電源からの給電が必要)が有るが、いずれも容易にクリア出来る。

7m以上のワイヤーアンテナを使用した場合は1.8~54MHzに対応とのことなので、給電ケーブルを含めると今回選択したATUエレメントも適用対象になると思われる。
最大定格入力は150W、FT8のようなデジタルモードでは約半分としても、移動局免許での上限50Wは十分許容範囲…今後の増強も一安心(実は思案中)。
屋外ATUならではの防水・防塵性能(防水保護等級IPX4)はもちろん、対応周波数範囲と最大定格入力に加えて、約2~3秒(メモリ機能により同一周波数の場合は約1秒)という高速チューニングと、チューニング動作時にはアンテナへの送信電力を約0.3Wまで低減する「不要電力低減機能」に惹かれた。

CMF付き同軸ケーブル

自作?のCMF(コモンモードフィルター)付き同軸ケーブルを使用。
前住居では収納ケースに収まっていたCMFを含む30cm長ほどを除いて風雨や直射日光に曝されていたけれども(反対側は窓サッシ用すきまケーブルに接続してコネクタ部分を防水テープで保護)、見る限り被覆やコネクタの劣化は全く見られず。(使用期間は三年少々。)

CMF付きコントロールケーブル

AH-730の情報収集中に、AH-4/AH-730対応のコントロールケーブル用コモンモードフィルタを見つけたので購入。
⇒『コモンモードフィルター iCOM AH-4/AH-730制御ケーブル用14ターン巻き コモンモードフィルター電波障害対策 新品』(ABILITY RADIO PARTS)

自作も考えたものの、このコネクタの入手がやや手間なのと、製品付属のケーブルを使うと全長が結構短くなってしまう上に大きなコネクタを通せるフェライトコアが必要になる…というわけで、非常に有り難い商品。

IC-705用ATU(AH-4)接続(変換)ケーブル

既に加工済み

IC-705にiCOM製ATU AH-4を接続するための変換ケーブル。
⇒『OHM-C7054(OHMC7054) IC-705とAH-4/AH-4改を接続するケーブル』(CQオーム)

AH-730での使用事例を見掛けたので購入…これが無ければ今回の外部アンテナ構成は実現しなかったかもしれない。
上の写真では、バラ線をまとめるためにコイルチューブを装着し、IC-705接続側にプラグのL型変換を兼ねた延長ケーブル(Φ3.5mm 三極L型ミニプラグ・メス⇒オス)を接続している。
尚、AH-730のコントロールケーブルに接続する側(フェライトコア)から一本だけ出ている赤い線は、IC-705と同じ外部電源の「+13.8V」端子に接続する。

カウンターポイズ

前住居でもお世話になったカウンターポイズ(1本5m×5本構成)。
⇒『OHM-CGW55M 自宅用ラジアルケーブルセット【ミニラグタイプ】』(CQオーム)

もしこれだけでは足りない場合、同じ製品の追加や前住居同様にBBQ焼き網設置・地面までケーブルを引いてアース棒打ち込み…かな。
※実際に敷設して確認したところ、この1セットのみで十分だった。(後述)

前準備(収納ケース/アンテナ取付金具)

収納ケース

使用するATU(iCOM AH-730)は屋外への設置を前提とした防塵・防水保護等級IPX4の防沫形。
また、今回設置を予定しているのは屋外ながら風雨の吹き込みが殆ど無く、直射日光にも曝されない場所。
そのまま置くだけでも良いのだが見た目が雑多になるため、CMFや各種ケーブルの結合部保護も兼ねてケースに収納することにした。

市販のキッチンボックスを使用

使用したケースは食材や調味料などの収納に用いられるキッチンボックス「アスベル キッチンボックス ウィル NF-65」(30L)を選択。
前住居でも同じシリーズのサイズ違い品にATU/UnUn/CMFを収納していて、ケーブルを通すために開けた部分を除いて追加の防水加工は一切施さなかったにも関わらず、風雨や直射日光に曝される場所に三年以上置いていても水や砂埃の侵入は一切無く、入れていた乾燥剤も年単位で使用出来ていたほど。
また、ケースの劣化(割れ、ひび、変形、変質、目立つ変色)も見られなかった。

蓋内側のパッキン

蓋内側の本体に接する部分には密閉用パッキンが有る。
ちなみに、このパッキンは補修パーツとしてメーカーの直販サイトで販売されている。

開口部① アンテナケーブル用

ATUエレメントに繋がる給電ケーブルを通すための開口部。
ケースに穴を開けて手持ちのゴムブッシング(ガスケット)を嵌め込み、十字の切り込みを入れている。
ケーブルを通した後でケースの内側から防水テープを貼り、更に保護をする。
(ラベルはしっかり貼り付けられていてキレイに剥がせそうになかったためそのまま残した。)

開口部② アースケーブル用

カウンターポイズなどのアースケーブルを通すための開口部。
加工手順についてはアンテナケーブル用開口部と同じ。

開口部③ 同軸ケーブル/コントロールケーブル用

無線機系に繋がる同軸ケーブルとコントロールケーブルを通すための開口部。
同軸ケーブル(BNCコネクタ)はアンテナケーブルやアースケーブルと同様にゴムブッシングが使えるが、コネクタが大きめのコントロールケーブルとまとめたいので、建物内へ屋外からのケーブルを引き込む際に用いる防雨カバー「パナソニック 小形防雨入線カバー 露出取付形 WP9171」※を使用した。
こちらもケーブルを通した後でケースの内側から防水テープを貼り、更に保護をする。
※以前、受信機(CommRadio CR-1)用の導音ダクトを作った際に購入して余っていた物。

AH-730の嵩上げ(ゴム足装着)

使用するキッチンボックスのサイズは、幅355×奥行き472×高さ253mm。
収納するAH-730のサイズは、幅230×奥行き340×高さ80mm。
一見すると十分余裕が有るように思えるが、ケースのサイズは外寸のため内寸は幅/奥行き/高さとも数cm小さく、底の方がやや窄まった形状のため幅と奥行きは更に小さくなる
またAH-730のサイズには突起物は含まれていない。
実際に現物合わせをしたところ奥行方向が少し短く、AH-730をそのまま収めようとするとアンテナ接続端子がケースの内面に接触して浮いてしまう。
AH-730の下に何か敷いて少し嵩上げすれば良さそうなので固定金具にゴム足を装着した。

元々、ガタつき防止と駆動時の振動音軽減のため固定金具がケースに直接触れないようにゴム足を装着する予定だったので、予定していた物よりも高さが有るゴム足(高さ40mm)へ変更した。

アンテナ取付金具

ATUエレメントをしっかり固定する

ATUエレメントはエレメントサポートを介して取付金具のマスト部分に固定する。
サポートはUボルト(M5)と通常のナットでマストに固定する。
エレメントは通常のプラスネジ(M4×30mm)でサポートに固定するが、移動運用時のエレメント着脱を容易にするためか蝶ネジが使われている。

今回は固定運用として長期間設置することを想定しているので、サポートとエレメントの固定ナットを共にロックナットに変更した。
併せて、固定を容易にし、且つ、屋外に長期間設置することから、各エレメントを伸ばした際に固定するネジは付属の通常プラスネジ(M4×30mm)から蝶ネジ(圧造ステンレス製 M4×30mm)に変更し、ナットも手持ちの蝶ナット(圧造ステンレス製)を使用した。

ATUエレメントで一点惜しいのは、エレメントサポートの対応マスト径が「Φ25~32mm」で一般的な取付金具のマスト径(Φ38~42mm)に満たないこと。
マスト径が大きな取付金具を使用する際には、適合径のマストを取付金具とサポートの間に介在させるか、サポートを加工するなどして大きめのUボルトを使う必要がある。

取付金具の横ブレ軽減

取付金具は対象物を前後から強く挟み込むことで固定する。
そのため、前後方向や上方向からの圧力(たとえば風)に対しては結構耐えるが、左右方向からの圧力に対してはどうだろう?
BSアンテナ取付を想定しているので、遥かに背が高い(長さ6.5m)ATUエレメントでは横からの圧力も結構大きいのではないだろうか。(長さはあるが重量は1.83kg/エレメントのみで1.36kgと比較的軽量。)
過剰な心配かもしれないが、念のため横方向にブレ難いよう左右に支え板を付けてみた。
市販のL型金具(ステンレス製で厚さ2mm)に滑り止めのゴムシートを貼り、金属用強力両面テープ(屋外使用可)で取付金具の上部に貼り付けて、左右からクランプで締め込んで固定している。
取付金具に穴を開けてL型金具をボルトで固定すればより確実だけども、厚いスチールに穴開けが可能な工具を所有していないので、ひとまず簡易的な方法で対策。

給電ケーブルの延長

ATUエレメント付属の給電ケーブル(約1m)では少々短いため延長が必要になった。
手持ちに適当なケーブルが無く、細めの同軸ケーブルの網線側のみを使って延長ケーブルを作成。
付属給電ケーブルとボルト締めで接続し、防水のため熱収縮チューブを被せている。
余裕を持たせて2.5mほどの長さ(付属ケーブルと併せて約3.5m)にしたが…少々長すぎたかも。
エレメント+付属給電ケーブルと合わせて約10mになり低い周波数でも多少は合わせ易くなるかと期待。
※設置後に確認したところ、1.8MHzまですんなりSWR値が下がった。(後述)

【後日談:2024/3/18】
追加した延長ケーブルは流石に長くて結構余ってしまったため、給電ケーブルと同等の線材を調達して短く作り直した。
ATUエレメントの給電点からATUまで一直線、降雨時に水滴がATUまで伝わらないように僅かに弛ませて建物などに一切触れない程度の長さ。
同調具合は全く変わらず1.8~50MHz帯の全範囲で以前同様にすんなり下がっている。
受信状況(信号強度やノイズレベル)については良くも悪くも変化無し。

設置

最初はベランダの柵にBSアンテナ取付金具を固定してATUエレメントの設置ベースにしようと考えていたが、実際にベランダを見てみると…柵の真上を超えて庇が大きくせり出しているし、柵自体も形状的に取付金具を固定するのが難しい…というわけで却下。
前住居同様に、ベランダ内に屋根馬(重石付き)を置き、庇を避けるようにATUエレメントを斜めに出そうかとも考えたが、家事で人が頻繁に出入りするため危険。(カウンターポイズも同様の理由でベランダ内への敷設を断念。)

自室横に(二階だけど)犬走り的な造りの箇所が有り、突き当りは取付金具を固定するのにちょうど良い形状の塀になっている。
少々狭いものの雨の吹き込みが殆ど無く直射日光にも曝されず、床面はコンクリート打ちっぱなしで片側の建物は鉄骨造りなためカウンターポイズの効果も上がりそう。

奥の塀に取付金具を固定し、ATUエレメントを装着している。
中程のキッチンボックスにATUやCMFを収納。
キッチンボックスの手前に3本と、写真では見えないが向こう側に2本のカウンターポイズ用ケーブルを敷設している。

収納ケース内

ATU、CMF×二個、ケーブル×二本の余剰分を収納。
尚、収納ケースの下には駆動時の振動音を軽減するために防振ゴムを敷いている。

室内へのケーブル引き込み箇所(開口部は室内側に防水テープを貼っている)

室内へのケーブル引き込みには、昨年末に光回線(光ケーブル)を引き込んだ際と同様に「エアコン配管用 アルミ窓パネル」のサイズ違いを追加購入した。
既にパネルを設置している光回線と同じ開口部(ベランダ側の窓)を通せば出費と手間を抑えられたが、引き回しが長く、一部ベランダを横切ってしまう。
一方、新たにパネルを設置した窓は無線機関連ラックの間近に有り、屋外でのケーブル引き回しも短くてスッキリする。
開口部はエアコンの配管を通せるサイズなので全く余裕…いずれ極太の同軸ケーブルに換えてみようかと思ったり。(室内での引き回しが大変そう。)

動作確認

動作確認中

IC-705のチューナー選択は「その他」を選択している。
(【MENU】⇒【SET】⇒【機能設定】⇒【チューナー】⇒【チューナー選択】⇒《その他》)

1.8~50MHzの全域(全てFT運用周波数)で満足出来るSWR値になった。
・1.8MHz…SWR:1.5前後
・3.5~28MHz…SWR:1.0~1.2程度
・50MHz…SWR:1.5前後

ATU(AH-730)のチューニング動作は評判通り高速で、長考したり途中で諦めることもなく、すんなり合わせてくれる。
ATUエレメントの対応周波数範囲外の1.8MHzでもSWRが下がっているのは、給電ケーブルを延長(約1m⇒約3.5m)したおかげだろう…実際に飛ぶかどうかは別として。

さて、設置と動作確認が無事完了したので早速FT8運用。
驚いたのは、PSKReporterで見ると北欧や南米まで届いていること。
もちろん相手の受信能力に助けられている面がかなり大きいと思うけれど、全く届かなければ如何に耳が良くても拾い上げることは不可能なので、ひとまず届いていることに感動。
以前、同様のアンテナ構成で南極(昭和基地)と交信出来た時は50W出力だったのに比べて今回は10Wだしね。

課題と懸念事項

課題

動作確認でSWR値は満足出来る結果になったが、今まで使っていたMLAと比較して7~18MHz帯でのノイズがかなり多い…垂直系アンテナはノイズが多いと見聞きするけれども…。
他のバンドに比べてノイズレベルが特に高く、試しに同軸ケーブルにCMFやクランプコアを装着しても全く変化無し。(電源系には既に装着済み。)
何が要因なのか?どう対処すれば良いのか?…暫く試行(思考)錯誤が続きそう。

⇒IC-705とAH-730に給電している安定化電源(DM-330MV)をOFFにすると、ノイズレベルが一気に低下することが判った。(受信している信号自体の変化は特に感じられず。)
この電源のACケーブルにもクランプコアを装着しているが、電源自体がIC-705の直近に有るのが何か影響しているのかも。
尚、同じくIC-705の直近に置いているPC関連(本体、ディスプレイ×3、他)やWi-Fiルーターについては、電源のON⇒OFFによるノイズレベルの明らかな違いは見られなかった。
ただ、PC関連と無線機関連の各機器は同じ、もしくは隣接したACテーブルタップに混在して繋がっているため、これも何らかの影響が有りそう。
いずれ、きっちり分離したい。

懸念事項

設置場所による飛び・受けへの影響が大きそう。
給電点は周囲を構造物に囲まれた中にあり、ATUエレメントの下1/3程度が屋根よりも低い位置、更には建物にかなり接近しているなど、設置場所としては余り宜しくない。
他にも、架線されている光回線のファイバーと接触しており、光ファイバーは電磁波ノイズを出さない・電磁波ノイズの影響を受けないため大丈夫だとは思うけれど、気持ち的に落ち着かない。

強風の影響も心配。
この地域は結構強い風が吹くことがあり、つい先日も洗濯物がハンガーごと物干し竿の端に押し固められるほどの強風が吹いていた。
初開局の際に屋根上へ設置した50MHz用GPアンテナが強風で傾いて、危険なため撤去されたという過去も有る。
今回設置したATUエレメントも風の受け易さという点ではGPと大差無く、二倍強の長さが有る分不利。
ATUエレメントの耐風速は30m/sec、取付金具の耐風速は不明だけどATUエレメントより低いということは無いだろう。

強風に煽られて多く振れる点も気になるところ。
実は、設置した日の午後にもかなり強い風が吹き、大きく振られたATUエレメントが建物に当たっていることに気付いて急遽ナイロンステーで引き離して仮対処した。(いずれ本格的に対処しなければ。)